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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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モデル立ち



『Albtraum』シリーズの三上涼君です。
ちょっと構想が浮かんだので描いてみました。影が難しい(>_<)



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第三話 Midnight UMA(5)


Midnight UMA(5)

「河島君、倒れそうなくらい蒼くなってたね。」

「風邪でも引いたんじゃない?」

「よく言うよな…。」

「まあまあ、涼君…。」

「仕方ないよ、東中の番長さんって本当に怖がられてたんだもんね。涼くんて本当に凄い…。」

「本当に──…え?」

 その瞬間美弥さんを除くボク達は完全に固まった。

「…美弥、知ってるの?その事。」

「え?涼くんが元東中の番長さんで、『大黒天』って呼ばれてたって事?あ、馨くんが転入して来たあの話感動だよね!友情だね!」

「ど、何処で…。」

 瞬間馨君がボクの方を見る。ボクは全力で首を横に振った。ボク達が美弥さんを見ると、彼女は得意げな表情をしている。

「ふふん、義人くんの前で林檎握り潰したら教えてくれたんだ!」

「…それ、『誰にも言うな』って言われなかった?」

「……あ。で、でも!馨くん達は知ってるんだからセーフだよね!?」

「(アウトだよ…。)」

「はあ…。義人の奴。」

「ご、ごめんね涼くん!私絶対他に言わないから!だって、皆私には秘密にしてるんだもん。ズルいよ!」

「美弥は今みたいに簡単に人にペラペラ喋るからだよ!」

「うう、いひゃいよう馨きゅん~。どうへなら涼きゅんに~。」

 美弥さんは馨君に頬をつねられて痛がっている。確かに美弥さんだけに秘密にしてしまったのは申し訳なかったな。涼君への気持ちが変わってしまったら、と思っていたけど、その心配もなさそうだ。

「結城先輩。何こんなとこで女性に手をあげてるんですか。」

「あ!森野きゅん!」

 いつの間にかボク達は東中の近くまで来てしまったようだ。以前、オカルト部に見学に来た東中の森野君が友人を数人連れてこちらにやって来た。馨君は美弥さんの頬から手を離し、森野君に向き直る。

「ああ、チワワ君か。後ろに取り巻き連れて随分仰々しいね。」

「森野だよ。もやし野郎に体型について言われたくないですよ。」

「もう、言い合いしちゃダメだよ!」

「いい加減目立つぞ。」

「三上先輩!はいっすみません!」

 馨君に敵意に満ちた表情を向けていた森野君がガラッと表情を変えて涼君を見る。森野君は東中の現番長で、元番長の涼君を最初は敵視していたけれど、色々あって今は尊敬?しているみたいだ。

「い、樹。三上先輩ってマジであの…?」

「ったりめーだ。お前ら迷惑掛けんじゃねーよ。」

「ま、マジかよ!!本物とかやべえな!」

「お前、あんま騒いで怒らせたらどーすんだよ!」

「……。」

 少年達が騒ぐ様に、涼君は呆れ顔だ。森野君はちょっと得意そうな顔をしている。こうやってみると、彼も中学生らしい子供っぽさがあってなんだか微笑ましいな。

「そうだ。君らカジマ君とオクラ君、フジツボ君って知ってる?」

「川上君、小沢君、淵本君ね。」

「は?何ですかいきなり。」

「おい、樹。この人は?」

「結城先輩。いちいちウザい先輩だよ。あとこっちは空気の柿本先輩。それとこの人はお菓子作りが得意な木下先輩。」

「えへへ。よろしくね!」

「(お菓子作りが得意、だって…?!)」

「めっちゃ可愛いじゃんか!オレ江上って言います!よろしくっす!」

 空気って…。何だか地味にショックを受けるな。でも、さっき言った川上君達も河童に襲われたと噂になっている子達だ。皆東中の生徒らしい。とても教える気なんてなさそうな様子の彼らに見兼ねた涼君が口を開いた。

「悪いけど、教えてくれないか?コイツ頑固なんだ。」

「み、三上先輩…。お前ら!何先輩にお願いさせてんだよ!」

「痛っ!え、俺らのせい!?」

「ごめ、ゴメンって樹!」

「はあ…。」

 ひとしきり大騒ぎすると、森野君達は川上君達の事を話してくれた。


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第三話 Midnight UMA(6)


Midnight UMA(6)

「川上達は僕のクラスメイトですよ。」

「一応樹の舎弟だよな!」

「(どういう中学時代なんだろう…。)」

「まあ大分下っ端ですけど。あいつら結城先輩みたいなもやし体型ですし何の役にも立ちませんね。」

「ふーん…。一応接点があるのか。下らない不良ごっこのお仲間ね。」

「…馨、いい加減にしろよ。」

 馨君は『もやし体型』に余程むかついているようだ。さっきから涼君の足を森野君達に見えない様に踏み続けて八つ当たりしている。ボクも美弥さんも注意するに注意出来ず、やり過ぎない様に見守っているだけだ。

「なんかいちいち突っかかってくる先輩だな。」

「大人気ないだろ?三上先輩もこんな人に付き合わされて迷惑でしょうね。」

「…チッ。」

「痛っ!!」

「どうかしました?」

「べ、別に何でも無い。」

「そ、それで、その三人てここ最近河童に襲われたんだよね?その事について聞きたいんだけど、いいかな?」

「あーあの噂ですか。」

「木下先輩の為なら何でも答えるッスよ!」

「ありがとう!その三人てさ、あ、あと北高の河島くんもだけど、なんか河童を怒らせるような事ってしたの?」

「さあ…。河島ってのは知らねえけど、そもそもあいつら別にそこまで仲良い訳でも無いと思うしな。」

「強いて言うなら家が近いって事ぐらいだよな。確か天の川公園と川の近くなんだって。」

「川って銀漢川?」

「ええ。三人とも同じくらいの時間に家の近くで襲われたって言ってました。」

「だっせーよな!橋の上から水掛けられたとか、足引っ張られて川に落ちたとかだろ?なんか黄緑の目を見たとか言ってるけどダサ過ぎてついた嘘なんじゃねーの。」

「その可能性もあるだろうけど。その子達の家と襲われたって場所と日時教えてくれる?」

 森野君達と別れ、ボク達は元来た道をを戻っていた。

「ムカつく餓鬼共…。」

「馨くん落ち着いて!気にすることないよ。馨くんはもやしより頼りがいあるもん!」

「フォローになってないよ美弥さん。」

「 それはどーも!」

「痛えよ!八つ当たりやめろ!そんなにムカつくなら運動して筋肉付けろよ。セーター着て隠さなくてもすむだろ。」

「あ、そのセーターってその為だったんだね。」

「ファッションだ!余計な事言ってないで現場検証しに行くぞ。」

 信憑性のある証言の中から襲われた場所と時間、全てがわかり、ボク達は次に実際の場所に行って調査する事になった。しかし、美弥さんはこの後用事があるらしく帰ってしまい、時間も遅いので今日は各場所を一人で少し調べて解散という事になった。

「ボクは銀漢川か…。」

 ボクは淵本君が脚を引っ張られて川に落ちたという銀漢川に来ていた。銀漢川は結構長い川だけど、この辺りは川幅は狭く、両岸は坂のように高くなっている。坂の上は舗装された道だが、淵本君はこの道を歩いている時脚を引っ張られて川に転がり落ちたらしい。引っ張った奴の方を振り返ると、黄緑色に光る目をした黒い人影が、急いで逃げて行くのが見えたという。

「本当に河童なのかなあ…だとしたらどうして川から逃げるんだろう。」

 本物の河童なら川に引き摺り込んだりするんじゃないかな。まあ、本物のわけないだろうけど。ボクは薄暗くなってきた河原に何かないか探しながらぼんやりと歩いていた。すると、近くに小さな洋風の建物が見えて来た。こんな所に随分お洒落な建物があるなと思っていると、慌てた様子で人影がそこに入って行くのが見えた。


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第三話 Midnight UMA(7)


Midnight UMA(7)



「…まさか、ね。」

 銀漢川の近くに妙な建物、そこに不信な動きの小柄な人影。怪し過ぎる。いやいや、何を考えてるんだボクは。馨君に影響されたのかな。

「君、ここに入りたいの?」

「ひぇっ!?」

 気付いたら、ボクはその建物の前まで来ていた。目の前には二十代半ばらしき男の人が微笑んでいる。独特の雰囲気の人だ。この建物の関係者だろうか。

「い、いえ!この辺には珍しい建物だなって思って!えと、うろついちゃってすみません。」

「ああ…。別に謝らなくてもいいよ。ここは教会なんだ。」

「教会、ですか。」

「うん。あまりそれっぽくないでしょう?町の人にも親しみやすいように宗教色が強くないような作りにしてあるんだ。」

「へえ…。」

「もし興味があるなら見て行く?あ、別に勧誘するつもりはないから心配しないでね。」

「い、いいえ。え、遠慮しておきます…。」

 教会の関係者だったのか。若い人なのに、なんだか凄く落ち着き払っていて不思議な人だ。よく知らないが、宗教関係者独特の雰囲気なのかもしれない。ボクは少し苦手な感じだ。

「そっか。もし気が向いたらおいで。最近は若い人もよく来てくれるから。」

「……あ、あの。さ、さっき誰かが慌てて入って行くのが見えたんですけど、その人も…?」

 ああ、あんまり関わりたくないって思ってるのにどうしてそんな事聞いてしまうんだ!ボクは質問してから後悔した。男は少し驚いた顔をしたが、また落ち着き払った微笑みを浮かべた。

「私はさっき君がいるのに気づいて出て来ただけだから見てないな。でも、神様に懺悔しに来た人かもしれないね。講堂は解放してあるから時々来るんだよ。そういう人の話は頼まれたら聞くけど、大体は聞かない様にしてるんだ。神様とその人の間の事だからね。」

「そうなんですか…。よ、余計な事聞いてすみません。えと、じゃあボクこの後用事があるんで、お邪魔しました。」

「ああ、うん。気を付けて帰りなさい。」

 ボクは男の言葉を背中に受けながら急いで帰った。黄昏時だったせいもあるかもしれないけど、なんだか不気味な感じがした。宗教って聞くだけで、あまり良い印象がないからかな。

 天の川公園。

「………なるほど、これか。」

「結城君!昨日夜遅くまで公園で何をしていたんですか!」

「部活動です。」

「その場合は届けを出すように言いましたよね!というか、部活動の延長は原則夜の八時まででしょう。」

「どーせ部活の指導どころか見にもいらっしゃらないのに。先生の監督不行き届きも問題じゃありませんか?」

「そ、それは…。すみません、ど、どうしてもそのー…。」

「顧問やるならその怖がり治してくれません?迷惑なんですけど。」

「な、なんとかします…って、そうじゃなくて!最近他校の生徒が不審者に襲われる事件も頻発してるんですから、気を付けて下さい!」

「あれ、馨君。それと…。」

「あ!裕太くん!裕太くんも日直?」

 朝、日直の用事で職員室に行くと、馨君がボクがあまり知らない先生に叱られていた。途中から馨君が叱ってたけど…。誰だろうと思っていると、後ろから美弥さんに声を掛けられた。


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第三話 Midnight UMA(8)


Midnight UMA(8)


「美弥さん!おはよう。うん。美弥さんも?」

「そうだよ!何見てたの?」

「ああ、馨君が…。」

「馨君?本当だ。また昨日何かしたの?」

「うん…。なんか夜遅くまで一人で公園を調べてたみたい。」

「危ないなあ。来須先生も大変だね。」

「あの先生来須先生って言うの?」

「えっ知らないの!?うちの部活の顧問だよ!」

「そ、そうなの?!」

 そう言えば、ボクは入部届けも無理矢理出されたせいでまともに部活の内容を知らないで入ったんだった…。改めて来須先生を見る。眼鏡に白衣姿のその先生は三十代くらいの若さで、馨君を叱る姿も何と無く頼りない。

「二年の化学の先生だよ。いつもヨレヨレの白衣着て、眼鏡もダサいからって女子にはダサ眼鏡って呼ばれてるんだ。しかもオカルト部顧問なのにすっごい怖がりでほとんど部活に来れないの。あ、でも優しい良い先生なんだよ?」

「こら君たち!用がないなら職員室から出なさい。」

「はーい!じゃあまた放課後ね、裕太くん!」

 美弥さんが急いで職員室を出て行った。ボクも日直の仕事の準備をさっさとすませ、教室に急いだ。

「おい、馨!聞いてるのか?ヨハネスがノート見せてくれって。」

「ご勝手にどーぞ!」

 馨君が涼君に数学のノートを投げつけている。大分イラついているようだ。普段教室でこんなあからさまな態度とらないのに…。

「痛えよ!ったく。」

「ご、ごめんね馨君。イライラしてる時に。すぐに返すからね!」

「来須先生に叱られたくらいでなんでそんなに機嫌悪くしてるんだよ。」

「うるさいな。来須先生は関係ない。」

「じゃあなんだよ。」

「放課後話す!」

 そう言って馨君は乱暴に教室を出て行ってしまった。涼君とヨハネス君は呆気にとられた顔で、ただ馨君が出て行った方向を見つめていた。

 放課後。結局馨君の機嫌は良くならないまま部活の時間になった。美弥さんが場を和ませようとニコニコしながら馨君に話しかける。

「馨くん!きょ、今日は何処に調べに行く?あ、その前に報告会だよね!私が調べたところはね──」

「もうやめた。」

「えっ。」

 その発言にボク達は驚いた。そんな事気にせずと言った様子で馨君はソファーにうずくまるようにして手近にあった本を読み出した。完全に拗ねてる…。

「な、何でだよ。お前あんなに張り切ってただろ?昨日も夜まで調べてたんじゃないか。」

「そうだよ!今回は本当に本物っぽいのに!」

「何かあったの?」

 ボク達はまるで子供のご機嫌をとる親のように馨君を心配した。その様子に、馨君は本からちょっとだけ顔をあげてうざったそうに見返してくる。

「そうだよ。夜まで調べたおかげで証拠を見つけたんだ。男子学生を襲ってたのは河童じゃない。」

「えっ!?」

「そ、それってもしかして犯人がわかったの?」

「個人まではわからないね。僕の知らない奴だし。てことで河童調査は終了。あー本当に紛らわしい事を…。」

 馨君はぶつぶつ言いながらまた本に顔を埋めてしまった。ボクは吃驚してしまった。まさかこのちょっとの間で犯人に目星を付けられたなんて…。

「ちょっと待て!犯人の目星が付いてるなら警察に言った方が良いんじゃないか?」

「バカなの涼?ああ、愚問だったね。そもそもが不良を川に突き落としたりのセコい悪戯だよ?だから学校内で注意される程度なわけ。警察が取り合うわけないね。」

「で、でもあとちょっとで犯人がわかるわけでしょ?せっかくなら見つけちゃおうよ!これ以上被害者が出たら可哀想だよ。」

「なにそれ。うちは慈善活動部じゃありません。それに襲われるのは多分不良だけだよ。自業自得だね。」

「馨…『奇怪な事件にお困りの貴方、ご相談お受けいたします。』ってチラシに書いてるじゃないか。」

「怪奇現象でも奇怪な事件でもないー。普通の人間が起こしてるつまんない悪戯ー。」

 馨君はよほどショックだったみたいだ。何を言っても聞く耳を持ってくれない。それどころかこっちを見向きもしない。そもそも、オカルト以外の事には殆ど興味がない人だから仕方ないのかもしれないけど…。


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