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当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。
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Beautiful Vampire(4)
数日後、作戦の決行日だ。放課後、ヨハネス君が通りかかる事を確認して涼君を除くボク達は彼を呼び止めた。
「あ!ヨハネスくん!」
「ひっ…き、木下さん!も、もうお菓子はいらないよ!ごめんね!」
「(ちょっと…。完全にトラウマになってるんだけど。)」
「(初めてがあれじゃ無理ないよ。余計に謝らなくちゃね。)」
「ち、違うの!今日はお菓子じゃないの!この前は、本当にごめんね。味見するの忘れちゃって…」
「(味見してもマシにならないけどね。)」
「(馨君!)」
「はいはい…。ところで、僕達これから涼の家に遊びに行くんだけど、ヨハネス君も来ない?」
「えっ。ぼくも行っていいの?」
「“了承を得られたら"ね。さあ、行こうよ。」
そういうと馨君はヨハネス君を引っ張り、僕達は涼君の家に向かった。ボクも初めて涼君の家に行くので、少しわくわくする。着くと、そこは結構大きなマンションだった。ご両親は共働きらしく、平日はいつも家にいないと聞いている。僕達はエントランスを抜け、ついに三上家の部屋の前に着いた。馨君がインターホンを押すと、しばらくして扉が開いた。
「はい。」
「!?」
扉を開けたのは、中学生くらいの女の子だった。ショートカットで、利発そうで綺麗な顔立ちだ。目元がどこか涼君と似ている。
「は、暖(はる)ちゃん…。」
「あ、馨さん。こんにちは。…皆さんお兄ちゃんのお友達ですか?」
「お、お兄ちゃんって…あなた、涼くんの妹さん!?」
「そうです。今日は皆さん遊びに来られたんですか?よろしかったら──」
「は、暖ちゃん!ちょっとま──」
「──“上がって下さい"。…?馨さん?」
馨君は見るからに落胆している。女の子、もとい暖ちゃんは状況が分からず困ったような顔をしている。
「と、とりあえず上がろうよ。ここにいても仕方ないし。」
「あ、お前達もう来てたのか。なんでそこに固まって…。」
後ろを振り向くと涼君がコンビニの袋を持って立っていた。どうやらお菓子とジュースを買ってきてくれたようだ。涼君は凄い表情をしている馨君と扉の内側から覗いている暖ちゃんの様子を見て、何が起きたかわかったらしく、見る間に青くなって行く。
「…お兄ちゃんも、どうしたの?」
「い、いや…。」
「そうだね。とりあえずお邪魔させてもらおうか。ね、涼?わあーお菓子買ってきてくれたんだありがとうー。暖ちゃんも、なんでもないからちょっと二人きりにしてねー。」
「ちょ、待てよ馨!別にわざとじゃ──」
先程とは打って変わって不気味なほどにっこり笑った馨君が、涼君を腕を掴んで玄関に上がり、涼君の部屋と思われる部屋に入っていった。ボク達は何が何だかわからないという顔のヨハネス君と暖ちゃんを誤魔化しつつ上がらせてもらった。
「…なんだかあっちの部屋から凄い音が聞こえてくるけど、どうかしたのかな?」
「また兄が馨さんに迷惑かけたからです。」
「?」
「き、気にすることないよヨハネス君!きっと皆で遊ぶものでも用意してるんじゃないかな!?ねえ美弥さん!」
「あ、あの部屋って涼くんの部屋!?やだどうしよう見たいけど見ちゃいけない気がするよ裕太くん!」
「あ、うん、そうだね…。」
「普通の部屋ですよ、お兄ちゃんの部屋。…多分今は物が散乱してると思うけど。」
暖ちゃんの態度から見るに、どうやら馨君は涼君の家でも相変わらずらしい。それにしても、暖ちゃんはとても落ち着いていて大人っぽい女の子だ。彼女は涼君が買ってきてくれたジュースとお菓子を用意してリビングにいる僕達に振舞ってくれた。
「えっと、暖ちゃん…だよね?ありがとう!」
「いいえ。そういえば言ってませんでしたよね。涼の妹の暖です。よろしくお願いします。」
「礼儀正しい子だね。ぼくはヨハネス・アルフォンヌ。ついこの間北高に転入して来たんだ。涼君にはいつも良くしてもらってるよ。」
「えっと、ボクは柿本裕太。同じクラスなんだ。よろしくね。」
「私は木下美弥!私も涼くんとはとっても仲良くしてもらってるよ!」
「皆さんよろしくお願いします。…あの、一つ聞きたいんですが、美弥、さんは、お兄ちゃんの彼女ですか?」
「へ?!ちち違うよ!や、そんなそんな!」
「じゃあ、馨さんの…。」
「いやないないそれはないよ。みんなただの友達!」
涼君の彼女か聞かれた時は真っ赤になったのに馨君の彼女か聞かれた瞬間平常に戻った美弥さんに若干呆れながら、ふと暖ちゃんの顔を見ると、何と無くホッとしたような顔をしていた。もしかして…。
「暖ちゃんは、馨君のことが気になるの?」
「え!ヨハネスくん!?」
「…ち、ちがいます。」
「赤くなってるよ暖ちゃん!可愛いー!」
「そ、そんなんじゃないです…。」
暖ちゃんは赤くなってうつむいている。まさか馨君までもてていたとは…。ボクはなんだかちょっと微笑ましいようなさみしい気持ちになった。
「ねえねえ、馨くんのどんなとこが好きなの?」
「えっ。」
「ぼくも気になるなあ。」
「…頭が良くて、優しくて、気さくで、笑顔が素敵な所、です。」
「「……。」」
「確かに、馨君てとっても優しいよね。ぼくも授業でわからない所聞いたりしてるよ。」
「…二人とも騙されてるよ。」
「頭が良い以外ほとんど当てはまらないね。」
「何か言った?美弥、裕太。」
ぎょっとして振り向くと、にっこりと微笑んでいる馨君が立っていた。その後ろで涼君がボロボロで立ってる。
「何の話してたのかな?」
「なんでもないよ本当!ね、暖ちゃん!」
「なんでもないです。」
「そんな事より涼君大丈夫?」
「ひっ…!だ、大丈夫だ…。」
「(一体何をされたんだろう…。)」
それからボク達は普通に友達の家に遊びに来たようにおしゃべりしたり、遊んだりして過ごした。普段と場所が変わるだけでなんだかとても新鮮な気持ちになるものだ。夕方になっても涼君達のご両親はまだ帰って来ないそうなのでみんなで夕飯を食べ、その日は帰路についた。