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当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。
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番外編1(11)
「はあ、そういう理由で仲良くなったってわけなんだね。」
「二人には絶対言うなよ!コンボで殺されるからな!」
義人君は興奮した様子でボクに言った。今日はたまたま馨君達が資料集めと言って図書館に行ってしまっているので、ボク達は留守番がてら珍しく二人で部室でお茶をしてたのだ。
「言わないよ。ボクだって馨君怖いし。というか、どうやったらそこまで調べられるの?本人しかわかんない所とか幾つかあったよね。」
「『情報通』を舐めちゃいけねーよ裕太。そりゃあ企業秘密だぜ!ま、ちょっと脚色もしてるけど…。」
「はは、でもその行動力に感心するよ。」
「まあ情報通のプライドってやつ?涼達について行くため勉強しまくりながら南高に潜入したり、マジであの時は死にそうだった…。」
「へえー。」
ボクはお茶を啜りながら適当に返事をした。実際たった一ヶ月でこの学校に入れるまでに学力を延ばした義人君と涼君も相当だと思う。三年間塾に通いながらひいひい言っていたボクからしたらなんだか嫉妬してしまう。
「まあ素直に結城の教え方の上手さは尊敬するよ。隣でちょこちょこ聞いてた俺もそれで随分助かったし。ただ涼は相当な目に遭ってたけどな…。」
遠い目をする義人君の様子からして何と無く察したボクは、ちょっとだけ結城君に教えてもらおうと思った事を後悔した。それにしても、涼君が不良だったとは。本当に信じられない事だ。僕は西中出身の上、不良とはなるべく距離をとって生活していたから『大黒天』なんて全く知らなかった。
「あれ、でもそんなに有名な不良だったのに今はみんな全然知らないってなんだか不思議だね。」
「ああ。そもそも一応そこそこのレベルの北高に不良が少ないってのもあるけど、何より東中から来た生徒がほとんどいないからだろうな。みんなほとんどここよりレベルの高い私立か、南高に行っちまったんだ。ま、それも見越して結城はここを選んだのかもなあ。」
「そっか。馨君てやっぱりいい人だよね。」
これでずっと気になっていた二人の不思議な関係が理解できた。馨君があんなに無茶な事が出来るのも、お互いを強く信頼し合っているからできることなんだろう。
「ま、俺はいけすかないけどね!涼もなんであんな奴について行けるんだか。」
きっと義人君は二人が急に仲良くなってしまって寂しいのだろう。本来なら幼馴染で親友の自分が何とかしてやりたかったのに、全て馨君に役を持っていかれてしまった気分なんじゃないかな。しかし、決して義人君がいけないわけじゃないとボクは思う。
「でも、思った事をそのまま実行出来るのが馨君の魅力なんじゃないかな。だから涼君だけでなくボクや美弥さんも馨君のそばにいるんだよ。義人君もなんだかんだいいながらね。」
「はっ!俺はそんな事ねーよ!あのドSっぷりといい人をナメた態度といい俺は大っ嫌いだね。それに俺オカルトとか苦手だし。」
「ふーん。じゃあ今すぐ部室出ていって二度と来ないでくれる?」
ボク達がびっくりしながら振り返ると後ろには図書館から戻ってきた馨君達が立っていた。
「げっ。結城!」
「何?二人で僕の悪口大会?お望みならそのドSっぷり披露してあげるよ。」
「ちっ違うよ!!ちょっと話の流れでそういう方向に行っちゃっただけで…。」
「そ、そうそう!てかそんな酷いこと言うなよー。俺たち友達だろ?」
「君は“涼の”友達であって僕の友達じゃないし。はい留守番ご苦労様ーどうぞ御引き取り下さーい。」
「友達の友達は友達でいいだろ!つかなんだよ今日は気が立ってんな!」
「目当ての本が見つからなかったんだとさ。図書館ハシゴさせらた身にもなれよ。」
後ろで静観していた涼君は、そういいながら重たそうな鞄を机に置いた。おそらく本が沢山入っているのだろう。美弥さんがちょっと困ったように微笑みながら説明を入れてくれる。
「そうなのー。『ツチノコ生態学』なんて、まあ、図書館にそうそう置いてないよね。」
「リクエストしといたんだ!そしたら取りにくるのが遅くて先に借りられてたんだよ。ったく。」
「そんなの誰が借りるんだか。」
「お前はツチノコのロマンをわかってないんだよ。ツチノコは昭和に始めて発見されたわけじゃない、江戸時代にはツチコロビという名で既に認識されていて、坂を得体の知れない何かが転がってくる事を──」
「それ今日二回目だから!疲れたから休ませろよ。大体なんで目当ての本見つからなかったのにこんなに沢山本借りたんだよ。」
「腹いせ。」
「もう馨くんたらイライラするとすぐ涼くんに八つ当たりしちゃうんだからー。」
「ちゃんと後で全部読むからいいだろー。」
「そういう問題じゃねーよ!はあ…。」
どうやら重たい本を涼くんに持たせていじめたかっただけらしい。半ば呆れて諦め顏の涼君とすまし顔の馨君。そんなすごい過去があったなんて知った所為かいつもよりもなんだか楽しそうに見える。ちらりと横目で義人君をみると、仏頂面をしながらも二人を眺めてる。二人の関係が微笑ましいような羨ましいような複雑なこの気持ちは、義人君の気持ちにちょっと近いのかな。なんて思いながらも、この空間に一緒にいられる事を嬉しく感じながらボクはお茶をすすった。
Fin
今回、番外編という形にしたのはオカルトが全然関係なかったからです。
脳内設定をそのまま文章にしたので、自己満足の作品です。
ご愛読ありがとうございます。
それでは、また。