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当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。
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番外編2(2)
そこには学ラン姿の華奢な男の子が立っていた。普段義人君以外の誰かが訪ねて来るなんてないので、ボク達はびっくりして彼の方を見た。しかも、うちの高校はブレザーだ。他校の生徒かな?と思って何か返事をしようと思っていると、馨君が読んでいた本を閉じ、その男の子の方に向き直った。
「そうだよ。君は?」
「あ、えっと、僕学校見学で来ました。東中の森野です。」
森野君はぺこりと頭を下げた。中学生が受験校を見学に来た、ということなのだろう。なんとも小動物のような動きをする男の子だ。ボクはその小さな肩幅を見て、つい半年程前は自分も中学生だったのに、なんだか急に大人になった気がした。
「え!来年ここ受験するの!?しかもオカルト部入ってくれるの!?」
美弥さんが興奮気味に彼に話しかけた。森野君はにこりと笑い、相槌をうった。
「はい!オカルト結構好きなんです。」
「うわあ嬉しいな!入る前から興味持ってくれるなんて!私木下美弥。よろしくね!」
「木下先輩ですね。よろしくお願いします!えっと、そちらは…。」
「あ、僕は柿本裕太だよ。よろしくね!」
「はい!柿本先輩!えっと…。」
森野君は馨君と涼君を見て名前を聞きたそうにしている。涼君は言いにくそうに目をそらしつつ口を開いた。
「俺は…。」
「僕は結城馨だよ。ここの部長。よろしくね、モリヤマ君。」
「あはは。森野ですよ!よろしくお願いしますね結城先輩!」
「君はどんなジャンルが好きなの?UFO?UMA?それともフリーメイソンとか都市伝説?ああ、七不思議や伝承とかもいいよねえ。僕はちなみにこの中だと最近は伝承に凝ってるんだ。ツチノコの伝承とかとても興味深いよ──」
「馨くん!いきなりそんな事言ったら引かれちゃうよ!」
「はいはい。」
「いいえ!結城先輩って博学なんですね!僕はそうですね、そんなに詳しくないですけど、仏教とか、インド神話、なんて興味ありますよ。」
一瞬、森野君が涼君を鋭く見たような気がした。しかし、すぐにあどけなく微笑んだ。
「先輩は、なんて仰るんですか?」
「……三上…。」
「よろしくお願いします、三上先輩!もしここに受かったら来年から仲良くして下さいね!」
「あ、ああ。」
「せっかく来てくれた所悪いんだけど、僕達今日はこれで部活を終了するつもりなんだ。また後日でいいかな。」
馨君が有無を言わせない雰囲気で森野君に言い放った。もちろんまだ部活動を終了するつもりはなかった。恐らく、馨君もさっきの森野君の目を見て何か感じたのだろう。
「ダメ!」
「…美弥。部長命令なんだけど。」
「そんなの感じ悪いよ!せっかく来てくれたんだし、お茶ぐらい出してあげよう?」
美弥さんの真剣な瞳を見て、馨君も観念したのか、ちょっと目をそらして溜め息をついた。こういうところは馨君も美弥さんに勝てないらしい。
「まあ、そうだね。お茶くらいならね。」
「いいんですか?じゃあお言葉に甘えさせてもらいます!」
「あっいや、ちょっと待って!」
咄嗟に制してしまった。お茶するということはつまり、あのマドレーヌを食べると言う事だ。流石に来年後輩になってくれそうな子にこれはまずいと思ったのだ。以前ヨハネス君に食べさせてしまったことを思い出す。しかし、上手い言い訳をしないと美弥さんを悲しませる事になる…。