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当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。
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番外編2(4)
それから数日、特に変わったこともなく、部室でだらだらする日々を続けていたある日、学校に着くと妙に廊下が騒がしい。ボクは気になって近づいてみると生徒達の会話が聞こえてきた。
「ねえ、これってマジなのかな?」
「どうだろ。でも本物っぽいよね。」
「でもそんな風には見えないけどなあ。三上って。」
…三上?もしかして涼君に何かあったんだろうか。一瞬森野君の顔が浮かぶ。何があるのかと気になり周りの生徒に割り込もうとした時、後ろから肩を叩かれた。
「おっす裕太。おはよ。」
「明子ちゃん!おはよう。ねえ、一体何があったの?」
「なんだお前まだ見てないのか。なんか三上の写真が一年の廊下に貼られてるらしいよ。」
「えっ、どんな?」
「中学の時のみたいだけど…。まあ、見てこいよ。」
そう言われ、ボクは生徒達の間を縫って写真が見える所まで近づいてみた。その写真には、この間の森野君と同じ学ランを着崩して高校生らしき男達と殴り合っている涼君が写っていた。顔も判別ができる程度には写っている。これはやはり、不良時代の写真のようだ。ボクはまずいと思いその写真を咄嗟に隠そうとしたその時。
「あ。これ、文化祭の時の写真じゃん。」
振り向くと、馨君と涼君が立っていた。涼君は青い顔をしているが、馨君は平然としている。先程の馨君の言葉に、野次馬根性を露わにした生徒達が注目する。
「えっ。結城、この写真の事知ってんのか?」
「うん。僕中学一緒だったし。これ、中学の時の文化祭でクラスで作った映画の一場面だよ。」
「えー!私本当に三上クンが不良だったのかと思っちゃったよお。」
「バカじゃなのー。三上くんがそんなわけないじゃん!」
馨君が事もなげに言い放つ。ここまではっきり言い切られてしまうと疑う気持ちなど薄れてしまう。しかも、涼君は元々評判もいい方なのだ。皆の感心は既に写真から外れている。
「まあ上手く演技できてた所を切り取って来たみたいだからねー。仕方ないんじゃない?ねえ涼。」
「え、ああ…。」
「なんだあ。じゃあなんでこんな写真出回ってるんだろ?」
「さあ?涼に恨みでも持ってる奴の仕業じゃないかな。」
「三上モテるもんなあ。振った女の仕業じゃね?」
「そんな奴いねーよ。」
「そういえばミナの元彼、涼クンのせいで振られたとか言ってるらしいよー。」
「えー!アタシそんなつもりじゃないよ!でもアイツならやりそう…。」
「ともかく、こんな写真外しちまおうぜ。このままじゃ気持ち悪いだろ。」
僅かな間にこの写真の出来事を信じる者は誰もいなくなっている。今は、誰がこんな事をしたのかについて感心が移行していた。生徒達は各々色んな推理をしながら廊下からばらけていく。ボク達も教室に戻った。
「凄いよ馨君!よくあんな簡単に誤魔化せたね。」
「ありがとな、馨。」
「別に対した事ないよ。謎が多すぎる事実ってのはちょっとそれらしい根拠を付けてやれば勝手に妄想で膨らんでいくものだよ。もう既に写真の真偽なんて皆どうでもいいのさ。涼も何か聞かれたら適当に合わせておけよ。」
「わかった。」
「皆さん席に着いて下さい。HRを始めます。」
担任の熊川のかけた声により、ボク達は一旦話を中断した。その後、滞りなく授業も終了し、放課後となった。ボクは授業もそこそこに、本当に誰が何のためにあんな事をしたのかずっと考えてた。ここ最近の出来事から考えるに森野君の仕業であるとは思うが、どうやって高校に入ったのか。以前の殺人事件の犯人の田口は、この学校の生徒だったから可能だったけど…。
「…でも、一体だれがあんな事。」
「まあ、十中八九あのチビ中学生だろうね。」
「あ、馨君。」
「帰るぞ。ほら、涼も。」
「ああ。」
涼君は女子達に映画の事について根掘り葉掘り聞かれて疲れた様子だった。しかし、返答につまる度に馨君が上手く答えていたから殆ど馨君との会話になってしまい、女子達は少し不満だったようだ。こういう所はなんだかんだ面倒見がいいなあと感心してしまう。