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当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。
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Tragedy of table turning(10)
どういう事だ?自分の為にここまでしてくれるような友達を恨む?しかし、馨君の言葉に古賀先輩の顔が真っ青になった。その顔を見て、羽淵先輩の目がみるみる開いていく。
「…ど、どういう事……?ひ、な…?」
「ち、違うの…違うの百合乃ちゃん…。私、は…。」
「『このままじゃ百合乃ちゃんまで』。最初に部室に来た時、貴女はそう言いましたよね。『お使いエンジェルさん』を信じていた貴女なら、呪った三人が不運に見舞われた時点で逆に恐れる必要はない。」
「そ、それは!……まだ『お使いエンジェルさん』を帰して無いから…!」
「なら自分に危害が加わる可能性もある。でも貴女は自分の心配をするそぶりなんて一度も見せませんでしたね。矛盾してませんか?」
「…そ、れ…は…。」
「彼女達を呪ったはいいものの、いざ本当にその願いが叶い始めたら罪悪感に押し潰されそうになった。だから僕達のとこに来たんでしょう?」
「…だ、から……それは…!」
「結城君黙りなさい!!ねえ…比奈?違うよね…?だって、私達…友達だよね?比奈!」
「…っ!や、やめて……結城君!なんで百合乃ちゃんに言っちゃうの…!そんな事言わなくても、知らなくても良い事じゃない!」
「…え……?」
古賀先輩は何かから逃げる様に目と耳を塞ぎながら馨君に喚き散らす。半ば逆切れ状態に近い。もう自分が何を叫んでいるかもちゃんとわかっていない様子だ。それが全て自白になっているとも知らずに。
「だって!友達って言うならどうして私がいじめられていたの気づいてくれないの!!なんで髪の毛切られた時も、その髪型似合ってるねなんて言えるの!!なにも知らないクセに沢山友達が出来て良かったねなんて言わないでよ!!!」
もはや悲鳴に近い訴えを終えると、古賀先輩はその場に座り込んですすり泣き始めた。羽淵先輩は、声も出ないと言った様子で、ただ古賀先輩に釘付けになっている。
「いじめられっこの典型だ。……これが古賀先輩の本当の気持ちですよ。彼女には貴女が守るだけの価値は無い。」
馨君の表情は何処か憐れみを含んでいた。確かに古賀先輩の言い分はただの逆恨みだ。全て他人任せで自分はただ耐えるだけ。ボクも経験している分その気持ちはよくわかる。だけど彼女は手を差し伸べてくれる友達さえ、今失ったんだ。羽淵先輩を見ると、よほどショックだったのか俯いたままぶつぶつと呟いている。馨君の声は届いているのだろうか。
「…でも、友達だとしても、こんな方法で守ろうとするのは間違ってるよ…。」
「羽淵先輩。話してください。そして白川先輩達に謝るべきだ。」
目の前に跪き、諭す様に話す馨君の言葉に反応して、羽淵先輩が身体を動かす。そしてゆっくりと縄から腕を抜いた。
「!」
「……結城君、人を縛るのは下手ね。暴れたらすぐに抜けたわ。そう、…私が比奈を助ける為、彼女達に怪我を負わせたのよ。」
「……。」
「『お使いエンジェルさん』、あれをやった次の日、教室で比奈が朝早く『あいつらを不幸に…』とお願いしているのを聞いちゃったの。そこで初めていじめの事に気付いたわ。…ふふ、まさか私も恨まれてたなんて…ね…。」
絡まる縄から器用に身体を引き抜くと、羽淵先輩はゆっくり立ち上がった。前髪で表情が見えず、どんな顔をしているかわからない。興奮状態の彼女がなにを考えているかわからず構えてしまう。
「あんなくだらない遊びでも利用してやればあいつらを苦しめられると思ったわ。白川まゆは選手生命を、岩瀬萌香は学校での居場所を奪ってやれたら良かった。岩瀬が額まで切ってくれたのは嬉しい誤算だったわ。ご自慢の顔に痕が残れば比奈をいじめる余裕もなくなるでしょう?」
「は、羽淵先輩…。もう良いですよ。もう、わかりましたから。」
「でも最も許せなかったのは河内渚。あの女が比奈のいじめの首謀者だったの。あの女が始めなければ比奈はこんな目に遭わなかった。あの女がいなければあとの二人も比奈を率先していじめる事はない。そう思ったら知らずに背中を押していたわ。」
「羽淵先輩!もう良いですって!」
「だけど、そうよね。一番悪いのは比奈がいじめられている事に気付かず助けてあげられなかった私。比奈の心を痛めつけていたのは、私。」
ナイフだ!彼女はポケットから折り畳みナイフを取り出し、刃を広げた。ボク達に緊張が走る。
「……このナイフで自分を刺したのよ。比奈と私を疑っている貴方から逃れるため。」
「羽──!」
「下がれ!馨!」
目の前にいた馨君を襲うつもりだと悟った涼君が咄嗟に襟首を掴み後ろに引っ張った。危ない所だった…。
「バカ!!危ないのは僕じゃない!早く先輩を止めろ!!」