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当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。
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Tragedy of table turning(8)
* * *
ドカッ
「きゃっ!」
派手に転んでから足を引っ掛けられたんだと気づいた。散らかしたバックの中身を何も言わずに片付ける。
「ごめんごめん比奈!大丈夫?」
さも心配そうな顔で話しかけてくる渚ちゃん。その皮の下はどんな顔をしているんだろう。
「比奈ってトロいんだから。はい、これ落としたよ。」
コンパクトを閉じ、笑顔で教科書を差し出す萌香ちゃん。きっと嘲笑を隠すのに必死なんだろうな。
「てか比奈髪切ったんだ。ふふ、ショートカット良いじゃん。」
そう言って渚ちゃんは私の髪に触れるふりをして私の耳元に顔を近づけた。
「誰かに言ったらもっと酷いから。」
その瞬間今までのことがフラッシュバックして身体が震える。彼女達のいじめは巧妙だ。誰にもばれない様に学校では友達を装っている。それに、他のグループの子の事なんて皆気にしないから。
「てことで、今日の放課後はどこ行く?昨日はまゆん家だったよね。」
「別に何処でも良くない?カラオケとか。」
「えーアタシカラオケ嫌かもー。つか最近マンネリじゃない?まゆ、他になんかないの?」
「…特にないかな。」
私を一瞥してからまゆちゃんが言う。まゆちゃんはこのグループのリーダーだ。でも、特に何もしない。私が何をされていても。昨日はまゆちゃんの家で渚ちゃんと萌香ちゃんにお腹を蹴られ、髪を切られた。今日は何をされるのだろう。もはや他人事の様に感じてくる。
「あ!じゃあさ、最近流行ってる『お使いエンジェルさん』ってやってみようよ。」
「あーそれアタシも聞いた事ある!」
「なにそれ。」
「知らないの?比奈、アンタ『お使いエンジェルさん』って知ってる?」
「し、知らない…。」
「エンジェルさんってあるじゃない?こっくりさんみたいな奴。そのエンジェルさんにお願いごとをすると、何でも叶えてくれるんだって!」
「私達の『お使い』してくれるから、『お使いエンジェルさん』。」
「ね、やってみようよ。まゆも!」
* * *
「…それで始めたんですか。」
「そう。失敗すると呪われるとか言われてるから、私に呪いをかけて遊ぶつもりだったんだろうね。…でも生徒会長の百合乃ちゃんが来てくれたから、結局普通のこっくりさんと変わらなかった。だ、だけど紙の切れ端を持ち帰った後で私、必死にお願いしたの!」
「彼女達が死ぬ様に、とでも?」
「…別に死んで欲しかったわけじゃないよ。それより苦しんで、辱められて欲しかった。ただ不幸になれば良い、私にした酷い事の罰を受けろって!」
「そんな…。」
「いけない事かな?どうせ遊びだと思ってたんだもん。いじめられっこはそんな事も望んじゃいけないのかな!!」
がくがくと膝を笑わせながら引きつった顔で古賀先輩が訴える。彼女の心の限界が来ていることがうかがえた。
「こ、古賀先輩…ちょっと落ち着いて…──」
「でも!実際に渚ちゃんが事故に遭って、萌香ちゃんも階段から落ちたって聞いて怖くなったの!!渚ちゃんの意識が戻らないからエンジェルさんを終わらせられないし、オカルト部の事を聞いてからずっと相談しようか考えてた。でもそのうちに、まゆちゃんまで…。だから『お使いエンジェルさん』を止めてもらうために貴方達に相談したのに!!」
本当の事を言うのが怖くて嘘をついて『お使いエンジェルさん』をどうにかしてもらおうとしてたのか…。うん?と言うことは、彼女は『お使いエンジェルさん』を信じていた…?
ガタンッッ!
その時、掃除用具入れのロッカーが一際強く鳴った。皆の視線がそこに集中する。すると馨君が悠然とした態度でロッカーの前に立つ。
「…この中に貴女のお願いを叶え、貴女を守ってくれた『お使いエンジェルさん』を捕らえてありますよ。」
「えっ…?!」
バン!