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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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第五話 Missing Days(6)


Missing Days(6)

「馨ー!おい起きろよ!もう皆支度終わってるぞ。」

 翌朝、ボク達は死んだ様に動かない馨君を必死に起こしていた。馨君は布団にうつ伏せになったまま動かない。昨日も疲れたと言って早めに寝てしまったから、ボクと涼君よりも寝ているはずだ。

「もうすぐ朝ごはんだよ。早く行こう?」

「聞いてるか、馨!…もしかしてどこか具合が悪いのか?」

 流石に十分も声をかけてるのにうつ伏せのまま動かない事を心配して、涼君が馨君の肩をそっと揺する。

「…た……ぃ…。」

「え?」

 呻き声の様なものがわずかに聞こえた。よく考えて、馨君が何か言ったのだと気づいて耳をすませる。

「…ぃ、痛くて…動けな、い。」

「ど、どこが痛いんだ?薬もらって来てやる!」

「ちょ、待って涼君!どこが痛いかわからなきゃ薬もらっても意味ないよ!」

 いつになく深刻そうな馨君の様子に慌てる涼君を落ち着かせて、馨君の返事を待つ。馨君は凄く辛そうに首を動かし、なんとかこちらを向いた。

「か、体…。体中が…き…ぅ……で。」

「なんだって?」

「だから、きん…つ、ぅ…で…。」

「………もしかして、筋肉痛?」

 わずかに首を動かして頷く馨君の頭に、ボク達の平手打ちが炸裂した。

「ということは、今日はお宿でのんびりするって事ですね?」

 本当に嬉しそうに来須先生が言う。そんな彼を心底憎たらしそうに見つめる馨君は、涼君に手伝ってもらってマッサージをしたおかげで歩けるくらいには回復した様だ。

「先生じゃなかったら殴ってたとこだよ、そのにやけ顏。」

「ちょ、先生に向っていくらなんでもそれは酷くないですか!?」

「じゃあ馨君、今日はどうするの?」

「無視!?」

「この地域の文献でも見せてもらおうかな。旅館にそういう類の本とかないの?」

「叔母さんに聞いてみる!確か天狗の絵が載ってる古い本とか蔵にあるって聞いた気がするよ。」

「じゃあお願い。」

「美弥ねーちゃーん!今日はどこ行くの?」

 不意に襖を大きく開けて美琴君が入ってきた。今日も一日ボク達と遊ぶ気満々の様だ。その明るい笑顔に昨日の夕方の面影はなく、ボクは少し安心した。

「美琴くん!今日は馨くんの筋肉痛が酷くてお部屋でゆっくりするつもりなの。ごめんね?」

「えーーじゃあ俺もゆっくりするー。」

 そう言いながらボクと馨君の間に座った。昨日だけで随分と打ち解けてくれたものだ。じっとしてられないのか、美琴君はせわしなく座り方を変えながらボクを見た。

「で、ゆっくりって何するの?」

「この辺りの天狗伝承の本を見せてもらうんだって。」

「じゃあやっとかーちゃん達説得してくれるんだね!」

「確信が持てたらね。」

「ちぇー…。あ、じゃあ俺持ってきてあげる!読んだらわかるんだよね!?」

 そう言うと勢いよく部屋から飛び出していった。子供らしい元気さだ。それを見送ってから、来須先生も腰を上げた。

「じゃあ、私も部屋にいますよ。皆さんだけの方が気楽でしょうし。」

「気が効くじゃん。」

「そういう言い方やめろよ…。」

「い、いいんですよ三上君!慣れてますから。」

 幸薄げな微笑みを浮かべながら来須先生は開け放たれた襖を閉めて出て行った。なんだかかわいそうになるが、来須先生も馨君と一緒だと疲れるだろうと放って置くことにした。当の馨君は全く気にした素振りも見せずにお茶を飲んでいる。

「ねえ馨にーちゃんこの人が被ってるのなに?」

「それは頭襟(ときん)。大日如来の五智を表した山伏が頭につける物だよ。」

「じゃあこのボンボンは?」

「…結袈裟(ゆいげさ)。修験道専用の袈裟。」

「修験道とか袈裟って何?」

「あーうるさい!全然集中できないよ!涼!相手してやれ!」

「美琴君…馨は邪魔されるのが嫌いなんだ。こっちで遊ぼう?」

「涼にーちゃん、修験道って何?」

「え、えーと…なんか修行する奴だよ。」

「なにそれ!修行するとどうなるの?」

「凄い力が使えるようになるとか…。」

「凄え!かめはめ波とか出せるようになんの!?」

「ああ、だいたいそんな感じだ。」

「全っ然違う!!もうお前ら外で遊んできなよ!」

 涼君と美琴君を追い出し、馨君はまた本に顔を埋める。仕方がないので、ボクは美弥さんと雑談を始めた。

「美琴君、元気になってよかったね。」

「うん!……やっぱり、天狗に攫われて、怖い目にあったのかな。」

「天狗かどうかはわからないけど、そうなのかもしれないね…。」

「でもね!美琴くんはやんちゃで、ちょっと悪戯っぽい所もあるけど、そんな嘘ついて困らせる様な子じゃないんだよ。きっと本物の天狗か、もしくは美琴くんが本物だと思い込むような何かだったんだよ!」

「……そうだね…。」

 確かに、美弥さんの言うように、美琴君は根は純粋でいい子だと、昨日一緒にいてわかった。やんちゃだが、一日行方不明になった理由を天狗のせいだと言って大人を困らせたりする子じゃないだろう。

「…何か知られたくない事があるのかな。」

「…美弥、もう他に資料はないの?天狗に関連するもの。」

「えっ!馨くんもう読んじゃったの!?」

「この地域の天狗について書いてある本が少なすぎる。あと絵巻物ばっかりだ。この地域の天狗を研究している本とかは?」

「あー叔母さんも文献として残ってるのはあんまりないって言ってたんだよね。特に興味持ってくれる学者さんもいないとか…。」

「なんでもいいよ。少しでも関連あるなら。」

「うーん、売店にはその複製本しかないし…。あ!そうだ!」

 美弥さんは何を思いついたのか、いそいそと部屋を出て行ったが、すぐにこちらに戻って来た。手には赤い何かを持っている。

「じゃーん!このストラップ、この地域限定販売の天狗の『さぶろうくん』!このグッズならいっぱいあるよ!」

 美弥さんは、初日に見せられた赤ら顔で鼻の長い、典型的な天狗の姿のストラップを突きつけて得意顔をした。なんとも間抜けな表情のさぶろうくんを見て、馨君が眉をひそめる。

「一応残ってる絵や伝承をモデルに作ったって話だよ!」

「…まあ、無いよりましか……。」

 そう言うと馨君は本の中の天狗の絵とマスコットを見比べ始めた。




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第五話 Missing Days(7)


Missing Days(7)

「ねえ馨にーちゃん!いつになったらかーちゃん達に説明してくれるんだよ!!もう待てないよ!」

 夕飯後、美琴君はボク達の部屋に乗り込んできたと思ったら馨君の腕を掴んで離さない。

「天狗に会ったって言ったとこにも行ったし本も読んだろ!?まだ信じてないの?!」

「美琴君、もうその辺にしたら…。」

「ヤダ!みんな明日帰っちゃうんでしょ?にーちゃんしかかーちゃん達を説得できる人いないんだよ!ねえお願い!」

 ぎゅっと腕を掴む力が強まる。馨君は、目尻に涙を溜めながら、必死に泣くまいとする美琴君を一瞥し、その手を振り払った。

「馨にーちゃ──」

「……そんなに言うなら。明日の朝、僕が出した結論を話してあげる。」

 歯磨きしてくる、と言い残し、馨君は部屋を出て行った。美琴君は驚いたような、不安そうな顔で振り払われた姿勢で固まっている。

「…大丈夫か?」

「……うん。」

 涼君に肩を叩かれ、姿勢を直す美琴君だが、その表情は先程のままであった。

 翌朝、先生を抜いたボク達は旅館の前に立っていた。まだ帰るわけではない。美琴君に強請られて女将さん達に美琴君は攫われていたのだと説得するためだ。しかし、ここにはボク達の他に美琴君しかいない。美琴君は不服そうな顔で馨君を見上げる。

「なんでかーちゃん達呼ばないの?」

「…良いの?呼んで。本当は天狗に攫われたわけじゃないのに。」

 馨君の言葉に美琴君が目を見開く。やはり、天狗の仕業ではなかったんだ。じゃあ、どうして馨君はそれがわかったんだろう?

「な、なんで!?なんでだよ!」

「天狗の容姿。凄く細かい所まで説明してくれたよね。夕方になると民家の灯りさえ見えない所で、よく色まで見えたね。」

「め、目が良いんだよ!それに懐中電灯持ってた!それに天狗の見た目、そのぶんけんと同じだったんでしょ?」

「ああ、数少ない文献の容姿とほぼ一致していて驚いたよ。子供の君がそこまで詳しいとも思えないしね。…でもね、一つ文献には載っていない点があったんだ。」

「そんなはず無いよ!だって…っ!」

 言いかけてとっさに口をつぐむ。馨君はそんな事気にせず、続けた。

「下駄だよ。天狗の履物についての記述は一つもない。もちろん絵にもね。描かれていた天狗の履物は草履だったり裸足だったりまちまちだ。…君が天狗の容姿の参考にしたのはこれだよね。」

 そう言って突きつけたのは、美弥さんが渡したあのゆるキャラのストラップだ。よく見ると下駄を履いている。

「文献を元に作られたデザインだからこのキャラの通りに言えばいいと思ったんだね。でも履物はオリジナルのデザインだったんだ。遠野の河童が本来の伝承では赤いのにキャラクターは緑色なのと同じだよ。一般的な妖怪のイメージを重視して大衆受けを──」

「じゃあ!本当は美琴くんはどこに行ってたの!?」

 美弥さんが馨君の話を遮って美琴君に詰め寄る。美琴君は普段なかなか見ない美弥さんの必死な形相に驚きながらも虚勢を張った。

「言えない!美弥ねーちゃんでもこれは言えないんだ!」

「…馨くん!わかってるんでしょ?教えて!!」

 美弥さんが凄い剣幕で振り返る。馨君は少し考えるような仕草のあと、ぽそりとつぶやいた。

「……誘拐、かな。」

「誘拐!?」

 馨君の言葉に驚くボク達を尻目に、美琴君の顔も青ざめる。

「ちが、違うよ!!違うったら!」

「…でも、確かあそこは車も入れない山道だし、歩いて隣町まで行くには山を越えなきゃいけないとこなんだろ?」

「バイクじゃないかな。案内してもらった所で天狗の羽でも落ちてないかと見て回った時、奥の方にタイヤの跡らしきものがあったんだ。」

 そう言って携帯の画面を見せる馨君。確かに土にタイヤ痕のようなものが僅かに残っている。

「まあ時間が経っていてバイクのものかはわからなかったけど。バイクなら山を越えるのも無理じゃない。それから、来須先生が黒い帽子を被ろうとした時凄く嫌がったのもバイクの黒いヘルメットを思い出したから…かな。僕は警察じゃないんでわからないけどね。」

 馨君も確証はないらしく、言葉を濁す。しかし、どうやら当たっているらしい。美琴君の表情にはそれが真実であることが表れていた。美弥さんが美琴君の腕を優しくさするが、美琴君は身をよじって嫌がる。

「美琴くん…なにもされなかった?怪我とか…。」

「ないよ!」

「美琴くん…。」

「どうして隠す必要があったの?」

「言えない!男の約束があるんだ!」

「…もういいよ。美琴。」

 振り返ると、真寿美さんが玄関から出た所に立っていた。

「美琴の声、部屋まで聞こえてたよ。」

「真寿美さん、知ってたんですか?」

「…ああ。」

「どうして叔母さん達に言わなかったの?」

「ごめん……。事情があったんだ…。」

「事情って…。馨くん!」

「僕は別になんでもわかるわけじゃないんだけど…。興味ないし。」

「お願い!」

 根負けしたのか、馨君は小さなため息をついてから、考えながら話始めた。

「……推論で悪いけど、マスオさんが助けたんじゃない?マコト君が戻って来た直後に帰郷してきたんだろ?でも自分が関わった事がバレると困る事情があって言い出せなかった、とか。」

「真寿美さんと美琴君だろ。…でもバレると困る事情ってなんだよ。」

「知るか。僕は今天狗にしか興味がないんだ!」

「凄い推理力だな。…その通りだよ。」

 真寿美さんはそう言って、ゆっくりと近くの小ぶりな岩に腰掛けた。胸ポケットから取り出したタバコをふかした。

「……俺、東京の会社に勤めてるって言っただろ?…辞めたんだ。」

「辞めたって…。き、聞いてないよ!?」

「半年前にね。会社で大きな失敗をして…それがきっかけで、ずっと働き詰めで家にも帰れない毎日にうんざりしちゃってさ…。でも、大見得切って大企業に就職した手前、お袋達に言う勇気がなくて…。しばらくは貯金切り崩してふらふらしてたんだけど、その貯金も残り少なくなって…さ。……どうしようもなくて戻ってきたんだ。」

 タバコを指に挟んだまま話す真寿美さんは、俯いたままだ。大人のこんな悲壮な姿はボクにとって衝撃的だった。肉親の美弥さんはもっとだろう。その顔は青ざめている。

「それで誘拐されているところを助けたってわけですか。」

「そんな大層な事はしてないよ。いざ家の近くまで来たら怖くなってね…。隣町のコンビニで立ち読みしていたら美琴が抱きついてきて…。最初は随分大きくなっていて気づかなかったよ。犯人がトイレに入っている間に俺に気づいたらしい。」

「ううん!にーちゃんがいなかったらきっと怖くて逃げられなかったよ。大人がみんな怖く見えて…でも知ってるにーちゃんの顔を見て逃げられたんだよ!」

「でも、そこまで来たなら最後まで付いていてあげたら…。」

「俺が真寿美にーちゃんに頼んだんだ!にーちゃん、仕事やめちゃった事言いたくないみたいだったし。それに……天狗のせいだって言えばもう襲われないと思ったから…。」

「美琴…。」

 どうやら犯人の報復を恐れて美琴君は嘘を付いていた様だ。来須先生の帽子や茂に怯えた理由はそのせいだったのかもしれない。不意に、美弥さんが真寿美さんの前に立った。瞬間、小気味良い炸裂音が響いた。

「真寿美くんのバカ!美琴くんにこんな嘘つかせるなんて!会社やめちゃったくらいでおどおどして…そんな事しなくても、真寿美くんの事皆わかってくれるよ!」

 美弥さんの訴えに、頰を抑えながら呆然とする真寿美さん。ボク達も、美弥さんの行動に驚きを隠せないでいると、真寿美さんはその手を口元へ移動させ、背中を震わせ始めた。



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第五話 Missing Days(8)


Missing Days(8)

「…っぷ、あはははは!」

「…?」

 堪えきれないという様子で真寿美さんが笑い出した。ボク達は訳がわからずただ呆然と真寿美さんを見つめた。真寿美さんは一しきり笑うと、タバコを消して立ち上がった。

「…やめちゃったくらいで、か。まさか女子高生に怒られるとは思ってなかったよ。」

「ご、ごめん。」

「いや、怒ってるんじゃないんだ。おかげで目が覚めたよ。……そうだよなあ、過ぎた事を何時までも気にしても仕方ないよな…。俺が馬鹿だったよ。ありがとう、美弥ちゃん。…美琴も、嘘つかせてごめんな。」

 優しく美琴君の頭を撫でる。美琴君はまだ状況が理解できてないのか、不安そうな顔で真寿美さんとボク達を交互に見た。小さな子にはまだ難しいようだ。美弥さんが美琴君の前にしゃがんだ。

「美琴くんも!ちゃんと本当のことを叔母さん達に言って犯人逮捕してもらおう?」

「でも!アイツが怒ってまた来たら…。」

「大丈夫!そんな事絶対させないよ!真寿美くんも美琴くんのお父さんも私より強いから絶対に守ってくれるよ。」

「でも…。」

「もし何かあったら私に電話して!すぐに戻ってくるから!ね?」

「……うん…っ。」

 怖かった事を思い出したのか、美琴君は目に涙を溜めて美琴さんに抱きついた。

「…美琴くん、真寿美くんと一緒に叔母さん達にちゃんと伝えられたみたい!」

 電車の中でメールの返信をしてぱちんと携帯を閉じて微笑む美弥さん。その様子に先程の美弥さんの頼もしい姿が重なって少し胸が高鳴る。普段はお茶目な美弥さんだけど、あんな風にしっかり人を怒る事もできるんだな。

「みんなに迷惑かけちゃってごめんね。」

「そんな事ないよ。…美弥さんカッコ良かったよ、二人を諭す時。」

「えっそうかな!?えへへ。ありがとう裕太くん!でも馨くんの推理がなかったらわからなかったよ!ありがとうね馨くん!」

「お礼を言うくらいなら天狗に会わせて欲しいね!結局ちょっと文献読んだくらいで終わっちゃったじゃないか。」

 そう言えば美琴君に付き合ってばかりで天狗の祠とか言うのにも行けず、結局ただの旅行で終わってしまった気がする。馨君がムクれるのも無理はないだろう。

「でもお風呂で真寿美くんから話聞いたでしょう?」

「ほとんど馨が一方的に蘊蓄語って終わったけどな。」

「これでも抑えたつもりだよ。……って、なんで美弥が知ってるの?」

「(ハッ!)ちち違うんだよ!?女湯が静かだから聞こえちゃっただけで、別に涼くん達の様子が知りたかったとかじゃないからね!腹筋を想像して悶えたりしてないからね!!」

 あわてて否定する美弥さんはいつも通りだ。馨君達も呆れている。

「もうちょっと自重しなよ…。」

「流石に先生いる前でそんな事…あれ、先生は?」

「前の車両にでもいるんじゃないの?」

 てっきり端っこに座っていたと思っていた来栖先生の姿が見えない。その時涼君の携帯が鳴った。

「あ、電話だ。…来栖先生から。」

「…もしかして。」

『もしもし!三上君!い、今皆さん何処ですか!?馨君に連絡しても繋がらないし、私を置いて勝手に帰らないでくださ──』

「ごめんなさい先生。電車の中なんで切りまーす。」

『え、ちょ──』

 馨君が涼君から携帯を無理矢理奪うと一方的に切ってしまった。その顔は何処か嬉しそうだ。

「…まさか馨君、わざと置いてきたの?」

「そんな事ないよ。先生がトイレに行ってくるって言うから先に着てた電車に乗って待ってただけさ。」

「それって待ってないじゃん!ど、どうするの!?」

「勝手に帰っちゃダメなんだろ?ここから乗り継いだ先に天狗が住んでるっていう小さい山があるらしいんだ!そこに行って暇潰ししようよ。」

 身を乗り出して地図を見せる馨君。どうやら選択権はないらしい。その瞳は外でボクらを照らしている太陽のように輝いていた。



Fin


あとがきという名のいいわけ。
お待たせした割に出来が悪いです…。ごめんなさいー!
補足ですが、美琴くんのお家は旅館経営という事もあって地元じゃ結構金持ちです。
なので誘拐犯は身代金目的で誘拐したのでしょう。(逮捕もされてないので詳細かけなかったのですが。)
なかなか話がかけなくて、なかば強引に書いてしまったので書いてたときは本当に苦しかったです…。
次の話は楽しく書いたので楽しみにしていただけたらと思います!
読んでいただいてありがとうございました!では!



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