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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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第七話 Pyrokinesis girl(7)

Pyrokinesis girl(7)

 週明け、メールで報告を聞いた美弥さんが昼休みにやってきた。

「アイリスちゃんのストーカー捕まえたんだってね!流石馨くん!」

「別に。勝手に相手からやってきただけだよ。」

「涼くんの家に火をつけようとしたんだよね。でも、どうやって他の放火の事も話させたの?」

「それは聞かない方が良いと思うよ。」

 早乙女はその後空が白むまで馨君による拷問をひたすら受けてから解放された。最後の方は声もあげなくなっていた。しかし誰も警察に届けを出していない為、仕方なく警察に突き出すことなく帰らせた。

「…でも、結局あれだけやったのに教室でノートが燃えた事とアイリスの部屋で起きた事については言わなかったな。」

「ああ、だってあいつやってないもん。」

「えっ!?」

 さも当然の様に言ってのける馨君。じゃあなんであんな事を…?涼くんが何か気付いたのか呆れ顔をした。

「…お前、ただ虐めたかっただけかよ。ドS」

「だって美弥がアロマキャンドルなんて持ってきたせいで呪いもやれなかったし、仕方ないじゃないか。僕はストレスが溜まってたんだ。」

「そういう問題かよ!関係ない奴にやつ当たりするなよな!」

「やってる間止めなかったクセに今更なに?そんなに言うなら代わりにお前でやってもいいんだけど。」

 馨君が何かを折り曲げるまねをして見せると、涼君が顔を青ざめさせながら構えた。ボクも昨日の事を思い出してゾッとしてしまう。

「もう二人とも喧嘩しないの!じゃあ、ノートと人形が燃えちゃったのは本当のパイロキネシスなの?」

「…どうかな。」

 また馨君は思案顔をして黙ってしまった。しかし、本当にアイリスさんはパイロキネシスの保持者なのだろうか。早乙女がやっていないと言った小火はどちらも他の人が見ていない所で起きている。もし誰かが付けたとしたら、それはかなり身近な存在で……。

「もしかして馨君、犯人て……。」

「あ、そういえば馨、今日もアイリスが二人で帰りたいって。」

「ええ!?」

「ふーん、頑張って。」

「なんで!?なんでなの涼くん!!」

「い、いや知らないけど…。二人が良いって言われたから。」

「手は繋がないよね!?と言うか半径五メートル以内に近づいちゃダメだよ!」

「つ、繋がねえよ。なんでそんな離れなきゃいけないんだ?」

「ダメったらダメなの!!」

 必死になる美弥さんに遮られて言えなくなってしまった。まあ…涼君が付いているなら今日はきっと大丈夫だろう。美弥さんに掴まれて身動きが取れない涼君の隙をついて馨君が携帯を奪った。

「あ!おい何するんだよ!」

「美弥が心配にならない様に設定変えておいてやるよ。美弥、ちゃんと押さえておいて。」

「了解であります!」

「痛っ!ちょ、苦しい…!」

「馨君、何を設定するの?」

 関節技で首と腕を固定する美弥さんを尻目に、馨君は自分の携帯と涼君の携帯を交互に見ながら何かを操作すると、パチンと携帯を閉じた。

「秘密だよ。」

『……お目覚めですか?三上さん。』

『…う、ここは……?…痛!』

『ごめんなさい。少し薬の量が多過ぎたんですわね。だって初めてだし、男の人ってどのくらい強いのかわからなかったんですもの。』

『は、何言ってんだ…?』

『覚えてませんの?私を送って下さった後、お礼にお部屋に案内したじゃありませんか。それでお紅茶をお飲みになったでしょう?』

『………薬を入れたのか。』

『睡眠薬ですわ。それから手足だけ縛らせていただきましたけれど、暴れないで下さいね。家には誰もいないけれど、外に聞こえてしまいますから。』

『っ…!…どういう事なんだ。』

『…やっぱり、貴方様は覚えていらっしゃらないのですね。』

『……すまん、なんの事かわからない。わかるように説明してくれ。』

『……。三上様、よく聞いて下さいませ。』

『…?ああ。』

『貴方様は前世ではブルーローズ国の王子で、私のフィアンセでしたの。』

『………は?』

『私はプリムローズ国の姫で、私の国と合併する為に貴方様と私は政略結婚をするはずだったんですのよ。ああ、でも勘違いなさらないで。親同士が決めたこととは言え私達は愛し合っていたのですわ。』

『ちょ、ちょっと待て。何言ってるんだ。意味が──』

『周りからも認められ、幸せになるはずだったのに、悪い魔女による嫉妬の魔法で私達はお互いを認識できなくなってしまったのです。そのせいで貴方様は別の女性と一緒になってしまった…。そしてこの時代でも、貴方様は魔法のせいで私がわからないのですわ。』

『っ!何する気だ。それ置けよ。』

『心配入りませんわ。私には炎を起こす力がありますのよ。そしてこの炎は浄化のパワーがあるんですの。私も最初は怖かったのですけれど、それは魔法のせいなのですわ。さあ…。』

バタン!



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