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当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。
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Midnight UMA(3)
「──…って事になったんだ。」
「ふーん。」
明子ちゃんはジュースを飲みながらあまり興味無さげに相槌をうった。今日は聞き込み調査のため、明子ちゃんと華代ちゃんとお昼を一緒にする約束をしたんだ。でも、明子ちゃんはあんまりこういう話が好きじゃない様子だ。
「オカルト研究部って本当よくわかんない事やってるんだな。」
「あはは…。殆ど馨君のためだけにある部活だからね…。」
「でも、確かに最近聞くよねその噂。南高の生徒が襲われたんだっけ。えーっと、河島君て子。」
「華代ちゃん知ってるの?」
「華代だけじゃなくて女子の間じゃ結構話が出てるよ。ま、女子ってそういう都市伝説みたいなの好きだからな。」
「そうなんだ…。詳しく教えてくれない?」
「ふふ。裕くんたらすっかりオカルト研究部員ね!いいよ。あたしが聞いた話だと…──」
先週の金曜日の深夜、南奎宿高一年生、河島直也は一人、タバコを吸いながら家に向かって歩いていた。周知の事実ではあるが、南高はかなり荒れている。彼もその不良生徒のうちの一人だ。不良同士の会合の後か、それとも別の用事か、街灯もまばらな道を悠々と進む。
河島はふと、公園を抜けて近道をしようと思いついた。天の川公園という林と一体となっているその公園を一直線に抜けると、彼の家はすぐそこなのだ。剥き出しの土の道や凸凹の急な階段があり、夜は特に歩きにくいが、そこをよく利用する彼は気にしなかった。自分を付け狙う存在がすぐ近くにいる事も知らず…。
「……?」
木の葉や小枝を踏みしめながら進む。しかし、パキパキと階段を降りる自分の足音とは明らかにずれた音がする。風で木々がしなっているんだろうか?それにしては不自然だ。しかし、気付いた時には既に遅かった。姿をはっきり確認する暇もなく、河島の身体は宙を舞った。最後に見たのは、不気味な緑色の光る目だった。
「──…っていう話を華代ちゃんから聞いたよ。」
「こ、怖過ぎだよ裕太くん…。その後その子どうなっちゃったの?」
「足首捻った程度だって。」
「誇張表現し過ぎだろ…。」
「華代ちゃんがこうやって話すと盛り上がるよって言ってたんだ。」
「変わった友達だね。」
「お前に言われたくないだろうけどな。痛っ!」
「殴られたいならそういえよ涼。」
放課後、ボク達は各々集めた情報を報告もとい部活のため部室に集まった。ボクはオカルト部と明子ちゃん達以外に殆ど友達がいないので、さっきの話しか聞いて来れなかったけど…。馨君がメモした紙を読み上げる。
「集まった話から河童の特徴をあげると、『目が緑色に光る』、『背が低く小柄』、『人に怪我をさせる』って感じだな。他にも空を飛んだとかあり得ない速さで走り去ったとかあるけど、一例しかないし、噂に尾ひれが付いただけと思った方が良いな。」
「なんか如何にもって感じだね!今回は本当に本物の河童なんじゃない?」
「美弥もそう思うか!これは本格的に準備をしないといけなくなりそうだな!」
「カメラ必要だね!」
「なんか盛り上がってるね…。」
「全くな…。」
「なんだよお前達。まだ疑ってるのか?」
「普通に考えて河童なんかいるわけないだろ。だいたい、やってる事はしょうもない悪戯じゃないか。」
「フン、これだから常識人は。お前みたいなのがガリレオを裁判にかけるんだよ。」
「なんだよそれ?意味わかんねーよ。」
「本当お前に説明するの疲れるな…。つまり、常識にしがみ付いてばかりいると真実を見落とし兼ねないって事だ!大体、河童じゃない理由は何処にあるんだよ。あるなら聞かせてもらいたいね。」
「う…。わかったよ。悪かった。」
殆ど馨くんに気圧されて涼君が折れてしまった。まあ、仕方ないよね。涼君が馨君に口で勝てるわけがないだろうし。
「じゃ、次は学校外に聞き込みに行くか。部室片付けて行くぞ。」
「へえ!珍しいね。自分達で情報集めに行くなんて。いつもは義人くんに頼むのに…。」
「……ああ、義人ね。」
「…彼にはしばらく休んでもらう事にしたんだ。使い物にならなくなってるから。」
「えっ?」