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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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第三話 Midnight UMA(8)


Midnight UMA(8)


「美弥さん!おはよう。うん。美弥さんも?」

「そうだよ!何見てたの?」

「ああ、馨君が…。」

「馨君?本当だ。また昨日何かしたの?」

「うん…。なんか夜遅くまで一人で公園を調べてたみたい。」

「危ないなあ。来須先生も大変だね。」

「あの先生来須先生って言うの?」

「えっ知らないの!?うちの部活の顧問だよ!」

「そ、そうなの?!」

 そう言えば、ボクは入部届けも無理矢理出されたせいでまともに部活の内容を知らないで入ったんだった…。改めて来須先生を見る。眼鏡に白衣姿のその先生は三十代くらいの若さで、馨君を叱る姿も何と無く頼りない。

「二年の化学の先生だよ。いつもヨレヨレの白衣着て、眼鏡もダサいからって女子にはダサ眼鏡って呼ばれてるんだ。しかもオカルト部顧問なのにすっごい怖がりでほとんど部活に来れないの。あ、でも優しい良い先生なんだよ?」

「こら君たち!用がないなら職員室から出なさい。」

「はーい!じゃあまた放課後ね、裕太くん!」

 美弥さんが急いで職員室を出て行った。ボクも日直の仕事の準備をさっさとすませ、教室に急いだ。

「おい、馨!聞いてるのか?ヨハネスがノート見せてくれって。」

「ご勝手にどーぞ!」

 馨君が涼君に数学のノートを投げつけている。大分イラついているようだ。普段教室でこんなあからさまな態度とらないのに…。

「痛えよ!ったく。」

「ご、ごめんね馨君。イライラしてる時に。すぐに返すからね!」

「来須先生に叱られたくらいでなんでそんなに機嫌悪くしてるんだよ。」

「うるさいな。来須先生は関係ない。」

「じゃあなんだよ。」

「放課後話す!」

 そう言って馨君は乱暴に教室を出て行ってしまった。涼君とヨハネス君は呆気にとられた顔で、ただ馨君が出て行った方向を見つめていた。

 放課後。結局馨君の機嫌は良くならないまま部活の時間になった。美弥さんが場を和ませようとニコニコしながら馨君に話しかける。

「馨くん!きょ、今日は何処に調べに行く?あ、その前に報告会だよね!私が調べたところはね──」

「もうやめた。」

「えっ。」

 その発言にボク達は驚いた。そんな事気にせずと言った様子で馨君はソファーにうずくまるようにして手近にあった本を読み出した。完全に拗ねてる…。

「な、何でだよ。お前あんなに張り切ってただろ?昨日も夜まで調べてたんじゃないか。」

「そうだよ!今回は本当に本物っぽいのに!」

「何かあったの?」

 ボク達はまるで子供のご機嫌をとる親のように馨君を心配した。その様子に、馨君は本からちょっとだけ顔をあげてうざったそうに見返してくる。

「そうだよ。夜まで調べたおかげで証拠を見つけたんだ。男子学生を襲ってたのは河童じゃない。」

「えっ!?」

「そ、それってもしかして犯人がわかったの?」

「個人まではわからないね。僕の知らない奴だし。てことで河童調査は終了。あー本当に紛らわしい事を…。」

 馨君はぶつぶつ言いながらまた本に顔を埋めてしまった。ボクは吃驚してしまった。まさかこのちょっとの間で犯人に目星を付けられたなんて…。

「ちょっと待て!犯人の目星が付いてるなら警察に言った方が良いんじゃないか?」

「バカなの涼?ああ、愚問だったね。そもそもが不良を川に突き落としたりのセコい悪戯だよ?だから学校内で注意される程度なわけ。警察が取り合うわけないね。」

「で、でもあとちょっとで犯人がわかるわけでしょ?せっかくなら見つけちゃおうよ!これ以上被害者が出たら可哀想だよ。」

「なにそれ。うちは慈善活動部じゃありません。それに襲われるのは多分不良だけだよ。自業自得だね。」

「馨…『奇怪な事件にお困りの貴方、ご相談お受けいたします。』ってチラシに書いてるじゃないか。」

「怪奇現象でも奇怪な事件でもないー。普通の人間が起こしてるつまんない悪戯ー。」

 馨君はよほどショックだったみたいだ。何を言っても聞く耳を持ってくれない。それどころかこっちを見向きもしない。そもそも、オカルト以外の事には殆ど興味がない人だから仕方ないのかもしれないけど…。


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