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当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。
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「はー!疲れたー!五菱はやっぱり居心地悪いよね。八重さんも相変わらずな性格だし。ねーレイちゃん?」
新宿に戻った十楽寺とレイはゆっくりと家の方へ向かって歩いていた。
「毎回祈祷の場に立ち会おうとするし、迷惑しちゃうよ。執念深くて勘がいいなんて、こっちからしたらこれ程厄介な相手はいないよねー。」
「……。」
「まあでもアレだけで三百万も貰えるならラッキーかな?奈々ちゃんへのお土産も買ったし、帰ったら三人でお茶にしようね!」
こくこくと相槌を打つレイに笑顔で一方的に話し続ける十楽寺だったが、ふと目の端に見慣れた巻き毛を捉えた。レイから目を離して正面を向くと、家まであと数メートルという所だ。その道を奈々美がこちらに全速力で駆けて来る。
「あれ、奈々ちゃん?わ、もしかして外までお出迎え?僕感動だよ!さあ、僕の腕の中に飛び込んでおいで!」
真っ直ぐに突っ込んでくる彼女に向かって腕を広げる十楽寺。しかし、奈々美は十楽寺の横すれすれを駆け抜け、隣に立っていたレイに勢いよくしがみついた。一瞬の間、間抜けな体制で立ち尽くしたままだった十楽寺が苦笑いをしながらため息をつく。
「ですよねぇ…。」
「何がですよねだ!遅いんだよ帰ってくるのが!!」
「いつも通りのつもりだったんだけど…。あ!もしかして僕たちがいなくて寂しかったの?もう、可愛いとこあるなあ!」
「ちがう!都合の良い解釈すんなバカ!」
「えへへ、ツンデレなんだから!」
十楽寺は納得行かなそうな顔をしている奈々美の頭を優しく撫で、家に向かって歩き出す。レイも奈々美を連れて十楽寺について行こうと足を踏み出すが、思い切りホールドされていて前に進めない。疑問に思って下を見ると、奈々美が未だにしがみ付いたまま俯いている。促すつもりで軽く肩を叩くが、一向に奈々美は顔を上げない。二人の様子に気付いた十楽寺が振り返った。
「どうしたの?早く帰ろうよ。こんな所で突っ立ってたら目立っちゃうよ。」
「…。」
尚も口を閉ざす奈々美の様子に、十楽寺はゆっくりと近寄ると中腰になって視線を合わせて優しく微笑む。
「…何かあったの?」
「……。出たんだよ、アイツが。」
奈々美のその言葉に十楽寺の顔色が変わる。その一言で全てを悟ったのか、十楽寺が今までになく神妙な面持ちで家を仰ぎ見た。
「そっか…。わかった。」
短く答えると、十楽寺はそのまま家に向かって歩き出す。レイも未だ不安そうな顔をした奈々美を連れて十楽寺に続いた。
彼らの家は事務所の上、地上二階である。古いビルの中だけを改装したもので、内装はアパート二部屋分を繋げた様な広さだ。一行はまるで強敵を前にした様に厳しい面持ちで二階へ上がり、我が家の扉の前に佇む。家主である十楽寺が重々しく扉を開け、ゆっくりと玄関に足を踏み入た。二人もその後に続く。しかし部屋の奥へは行かず、三人は玄関で固まったままだ。十楽寺がじっと部屋の中の気配を探る。
「……。…物音はしないか。奈々ちゃん、奴は何処にいたの?」
「…九喜の部屋の前。」
「チッ!よりによって神聖な僕の部屋にでるとは、黒い悪魔め…痛⁉︎」
いつもより声のトーンを落としてシリアスムードを作る十楽寺にすかさず奈々美が突っ込みの平手打ちを打ち込んだ。