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当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。
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番外編1(2)
屋上には、三上涼が一人寝そべって空を見上げていた。冬の肌寒い風が吹くが、彼はここが好きだった。ほとんど人が来ず、遠くから生徒たちの微かな声が聞こえるだけで、ただ広い空が広がる屋上に一人でいるのは、まるで別の世界にいるように感じた。涼が一人ぼんやりと空を眺めていると、不意に人の気配がした。
「屋上でサボりとか青春だねー。」
涼は少し驚きつつ、身を起こして相手を見た。そこには先程と打って変わって無愛想な態度の結城の姿があった。
「…なんだよ。誰?」
「結城馨。今日3年のクラスに転入してきた。」
「俺になんか用?」
「別に。教室うるさいからここで昼にしようと思って。」
そういうと結城は屋上の床に腰をおろし、焼きそばパンを食べ始めた。涼は普段なら追い返すところを、結城の飄々とした態度に少しあっけに取られて制止することが出来ず、仕方なく姿勢をもどした。
「…お前、今みたいな言い方してると不良に絡まれるぞ。細くて弱そうだし。」
「ご忠告どーも。心配しなくても外面良いから大丈夫。この時期に問題起こして内申下げるような事しないし。」
「喧嘩売ってんの?」
「え、何が?」
「……別に。」
「あれ。ねえ、お昼持ってないの?もう売店じゃ売り切れだったよ。」
「…あっそ。」
「もしかして買い忘れたの?ごめんね僕これしか持ってないから分けてあげられないや。」
「……。」
「あ、それとも昼抜いてそうやってるのが恰好いいとか思ってるならやめた方がいいよ。リアル厨二病は君が思ってる以上に超ダサいから。」
「あのさ、俺がさっき言ったこと覚えてる?」
「『あっそ』?」
「…あんたさあ俺が喧嘩ふっかけて来るとは思わねーのかよ。どーみても不良だろ。」
「それはないよ。」
「何で。」
「君本当は喧嘩嫌いでしょ。」
「……は?」
「あ、もうすぐ時間だ。」
そういうと結城はそそくさと片付けてドアへと歩いて行った。しかし、不意に立ち止まると涼の方を振り返った。
「あ、それと。大黒天とか言われてる割には覇気がないんだね。三上涼くん。」
「えっ。」
「じゃ、またね。」
結城はそれだけいうと、今度こそすたすたとドアに向かって歩き始めた。まさか自分の事を知っていると思わなかった涼は呆然とその姿をしていたが、結城がドアを閉める直前に怒りがこみ上げてきた。
「なんなんだよ…。もう来んな!!」
しかし、結城は気にするそぶりもなく、屋上を後にした。