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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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Albtraum番外編2(7)


番外編2(7)



 河川敷。

「きっちり四時。来てくれたんですね、三上先輩。」

「…。」

「三上先輩って僕とあんまり口きいてくれませんよねー。僕嫌われてるのかな?」

「…森野。あの写真を学校に貼ったのはお前なんだろ。」

「ああ、そうですよ。案外噂になってなくて残念。それがどうかしましたか?」

「…っ。何故そんな事をするんだ?俺がお前に何かしてしまったなら、謝らせてくれ。」

「……。信じられないですよ。あの大黒天と呼ばれた男が謝らせてくれだなんて。」

「どういう事だ?」

「あー、もしかして僕が三上先輩に恨みがあると勘違いしてるんですか?違いますよ。むしろ逆っていうか、貴方に憧れてるんです。」

「は…?」

「僕こう見えて中学で番長やってるんです。つまり、そういう意味でも三上先輩の『後輩』ってわけですよ。それで一度お会いしてみたいなと思って。」

「…何が目的なんだよ。」

「ここに呼び出された時点でわかってるでしょう?お手合わせ願いたいんですよ!」

 そういうと手にした廃材を横から思い切り脚に向けて振り抜く。が、反射的によけられてしまった。

「あーやっぱり凄い運動神経ですね。普通の奴なら今の絶対当たってますよ。夜襲かけて確かめさせたけど腕は鈍ってませんね。」

「あれもお前の仕業かよ。…そんな事して何になるんだ。」

「…先輩も知ってると思いますけど、僕達の世界って案外ジンクスみたいなのが多いですよね。どっかの原始民族みたいに首領を倒した者が新しい首領になれる、とか。」

「俺はもうそういう関わりはない。いい加減にしてくれ。迷惑かけたくない奴らがいるんだ。」

「…結城先輩達ですか。随分丸くおなりになって。そういうの反吐が出るわ!」

 再び殴りかかる。今度は息をつく暇も無く連続で。それは腹や脚など避けにくく更にダメージの大きい箇所ばかりだ。攻撃の一つ一つが重く徐々に体力を削って行く。

「っ…なんで避けないんですか。つーかなんで攻撃して来ないんです。」

「…俺はもう意味なく人を殴りたくないだけだ。だが、それじゃお前が困るんだろ。ならお前の気が済むまで付き合ってやる。」

「…ふっざけんな。ナメてんじゃねーよ!お前までオレをコケにする気か!?」

 激昂し、先程よりも更に激しく殴りかかる。その動きは早く、ガードしきれず少し体制を崩した所を素早く反応して蹴りを入れられる。ざりざりと土を踏む音と土煙りが橋の下に広がった。

「くっ…!」

「はあ、はあ…。どうしたんですか。ガードばっかじゃモタないですよ。一応これでもトップなんで。オレよりデカイ奴も相手してるんです。」

「なら俺に構う必要ないだろ。お前は十分強いよ。」

「腑抜けた事言ってんじゃねーよ。……なんでアンタが『大黒天』でオレが『狂犬』なんだ。」

「?」

 チャキ、とサバイバルナイフを出す音がした。至近距離からの攻撃だが咄嗟にかわしその右手を抑える。しかし、すぐにその体制を利用して殴りつけられ、二人は距離をとった。薄暗闇に不適な笑みが浮かぶ。

「…これなら少しは本気出せますよね?」

「森野…。」

「虚しくないの?『狂犬』君。」

「「っ?!」」

 涼君と森野君が上を向く。馨君が橋の上から二人を見下ろしていたんだ。そして、ボクも。馨君の後を追ってきたんだ。

「裕太。言うなって言ったろ。」

「ゴメン…。」

「なんで裕太が謝ってんの?悪いのはそこのチワワだろ。」

 馨君が森野君を指差す。森野君は憎々しげにこちらを睨みつけた。

「チッ…さっきのどういう意味だよ。オレが虚しいだと?どういう意味か説明して下さいよォ結城先輩!」

「随分化けの皮が剥がれたねー森野樹。そのままの意味さ。無抵抗の人間に刃物向けて何がお手合わせだよ。」

「うるせえな。てめーに関係ねえだろ。ああそうだ、三上先輩!オレを倒さないとこいつら二人どうなるかわかんないよ。ほら、かかってきて下さいよ。」

「…もうやめろよ。お前は何に必死になってるんだ?」

「うるせえ!調子コクのもいい加減にしろ!」

 森野君はナイフを振りかぶると涼君に突進した。が、いきなりナイフを持ち替える。視線も一瞬だがこちらに向けられた。その時ボクは確信した。森野君はナイフをこちらに投げるつもりだ。

「か、馨君危ない!」

「!?」




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