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当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。
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「義人もいい迷惑だな。中学の偵察までさせられて。」
「情報収集の仕事与えてやってるんだから文句ないだろ。お前も大した怪我なくて良かったな。」
「ああ…。つーかお前はなんで来るなって言ったのに来たんだ。場所も言わなかったのに。お前こそ危なかっただろ。」
「場所は東中の連中が溜まりそうなとこを虱潰しに探したんだよ。涼は無茶するだろうからね。案の定反撃する気なかっただろ。青春漫画かお前。」
「…迷惑かけて悪かった。」
「…。僕まで青春漫画に巻き込まないでよ。キモい。」
「なんだよその言い方は…。俺だっていつまでもお前の世話になりたくないんだ。写真の事も、馨がいなきゃ本当の事がばれてたかもしれないし、お前に頼りっぱなしだったから…。」
「あー本当手間のかかる奴だよなお前は。喧嘩強いだけで馬鹿だもんね。」
「悪かったな…。」
「…別にいいんじゃない?ま、下僕を守るのが主人の務めだからね。」
「下僕じゃねーよ!なんだその設定。」
「助けて頂いてありがとうございます御主人様、って言ったら今回の事は帳消しにしてやるよ。言わないなら写真の事バラす。」
「はあ!?お前何言ってんだよ!SMプレイはよそでやれ!」
「そんな事言っていいと思ってんの?ほら早く言えよ。バラされたいならいいけど。」
「脅迫だろそれ!絶対言わないからな!」
「あーまた馨くん達が戯れてるー!私も入れてー。」
「涼君も大変だね。」
「裕太には関係ないよ。ねえ美弥、丁度良いとこに来たね。実はこの写真──」
「ちょ、マジで言うなよ馨!」
あれから数日、森野君は高校に来る事はなく、普段通りの生活を送っていた。義人君によると今でも東中の番長を続けているらしいが、以前よりもだいぶ大人しくなったらしい。東中で不良の喧嘩が減ったと言っていた。きっと何か思う事があって、彼なりに自分に決着を付けつつあるんだと思う。ボクは森野君の震える小さな背中を見てから密かに心配していたが、どうやら大丈夫そうだと思い、ほっとしていた。その時、不意に部室の扉が開いた。
「こんにちは!三上先輩!皆さん!」
「えっ森野君!?」
扉を開けたのはなんと森野君だった。この間と打って変わってまたあの無邪気な微笑みを浮かべている。ていうか、なんで涼君だけ別で呼んだんだ?
「…あれ、森野君。なんでまた来てるのかな。もしかして馬鹿?」
「あははは。結城先輩も相変わらず減らず口ですねー。部活見学ですけど来ちゃいけませんか?」
「来てもらいたくないなあ。ここは子供の遊び場じゃないんでね。部長命令で出入り禁止にするよ?」
にこやかに微笑む馨君と森野君の間にバチバチと火花が散っている。こうやってみるとなんだかこの二人は性格が似ているのかもしれない。しかし、毒を吐く馨君を無視して不意に森野君が涼君に近寄る。ていうか、ちょっと近すぎるんじゃないかな。涼君の手を強引に握り顔の前に持って行っている。なんだか瞳もキラキラと輝いてみえる。涼君もその様子に若干引いてるようだ。
「三上先輩!お手合わせありがとうございました。この間は僕の完敗です。」
「えっ、ああ…別に。」
「先輩の言葉、胸にしみました。なんだか余計に憧れちゃいます。此れからはもっと自分と向き合って、もっと強くなってみせますね。今は手下どもに誰が上か身に刻んでやってるんです。」
「(手下って…。)そ、そうか…。根詰めすぎるなよ。」
「はい!先輩を目標にします!」
森野君はまるでアイドルでも前にしているような様子だ。涼君が居心地悪そうに目線をそらしている。この間と凄いギャップだ…。
「な、なんかこの前と随分違うね…。」
「…あー。一周回って変な方向に行っちゃったみたいだね。優しい言葉かけられて、羨望や憎しみが憧れとか愛情になっちゃったんじゃない?」
「ええっ!森野くんって涼くんが好きなの!?ダメダメ!絶対駄目だよそんなのっ!」
「涼が森野君と付き合う前に告白するんだな。」
「うわあんそんなの無理だよー!」
「美弥さん冗談だよ…。」
こうしてこの騒動は一応決着がついた。少し賑やかになった部室に射し込む光は、夏の気配を匂わせている気がした。
Fin
ご愛読ありがとうございました。
この話は、適当に絵を描いてた時に“森野樹”像が出来上がったので、
せっかくなら登場させようと思い書いたものです。
誤字脱字ありましたらすみません。ではまた。