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当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。
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翌日、ボクは登校すると、意を決して結城君達の席の前に行った。
「あの…!お、おはよう!」
「……あ、カキツバタ君。」
「柿本だろ。…どうしたんだ?」
「えーと…あの──」
「はいはいはい。どうせもう関わるなとかそういう事言いに来たんでしょ。いーよわかってるから。」
「…???」
「せっかく見つけられそうだな~って思ったんだのにさぁ~。あーあーつまんないな!」
「……結城君、どうかしたの?」
「いや、すまん。コイツいじけてるだけだから。で、どうしたんだ?」
「……ボク、やっぱり協力するよ!このままじゃ、すごく怖いし、少なくとも一人でいるよりはましだと思って。それに、気になる事があるんだ。」
「…気になる事?」
「うん。今まで殺された子の事なんだけど、その…えぐり取られた部分、占星術によると乙女座と天秤座の象徴になる体の部分なんだって。」
「……象徴。そういえば確かにそんな話聞いた事あるな…。乙女座が内蔵で天秤座が腎臓…だよね。」
「知ってるの!?」
「言ったでしょ。僕達はオカルト研究部だよ?そこら辺の文献は調べてあるんだよ。」
「俺がな。」
「え、三上君が?」
三上君はスポーツ万能でクールな、女子に人気なイメージだったから、てっきり運動部に入っていると思っていた。まさか結城君と同じオカルト部だったなんて…。
「ああ。馨に強制的に。」
「本当は嬉しいくせにね。無理矢理何かさせられるのが好きなんでしょ?」
「俺はマゾじゃねーよ!このドSが!」
「まあ涼のプライドの為にもこれ以上は話さないでおいてあげるよ。ところでカキアゲ君。」
「柿本です!どんどん原型からはなれていってるよ…。」
「君蠍座?」
「(無視か…)そうだよ…。」
「ふーん。だから君が狙われたってワケね ちなみに蠍座の象徴はね。」
結城君がボクに耳打ちした。
「──だよ」
「っえええ!?そこは死んでも嫌です!」
「だよね。という事で今日から登下校は僕達が一緒にしてやるよ。まあ危険なのは放課後とか人の少ない時間帯だろうけどね。」
「あ、ありがとう…。でも、どうしてそこまでしてくれるの?」
「涼、アレ。」
「ったく。…俺はお前の召使いじゃないんだぞ。」
そういいながらも三上君は机からチラシを出し、ボクに見せてくれた。チラシには『怪奇現象、奇怪な事件にお困りの貴方!ご相談お受け致します!! 北奎宿高等学校オカルト研究部より』と大きく書かれていて、その下に『御用の方は下に名前を書いて部員に渡して下さい。』とある。どうやら契約書もかねているようだ。
「…これは?」
「書いてあるでしょ?奇怪な事件のご相談お受け致しますって。ついでだからその下に署名してくれる?」
「あ、ああ…!でも、なんでこんな事を?」
「…すっごく興味があるんだ。」
「え?」
「怪奇現象や奇怪な事件に!幽霊とか妖怪とかUFOとかUMAとか、科学で説明できない存在に!だって不思議じゃない??テレビやラジオみたいなのがなくて情報伝達が簡単にいかない時代になぜまったく違う地域で同じ様な妖怪や魔物を想像できたのかとか、農場の牛が一夜にして大量に死に、しかも死体がひからびて体液がほとんど失われていたりとか!」
「は、はぁ…。」
「どう考えたって今の科学じゃ説明できないだろ?!同じ様な生き物を考えたってのは少なくともそれに似た形の生物がいたって事だし、牛の大量死はアブタクションと言われ宇宙人の仕業だという話もある!今回の事件はこれらと直接の関係は見受けられないけど何かの儀式のように感じるんだよね。だから犯人を捕まえて何の儀式を行おうとしてたのか問いつめ──んぐっ。」
「はいはいはい!もうその辺にしとけよ。柿本引いてるぞ。」
すっかり自分の世界に入ってしまい、目をギラギラさせながらにじり寄ってくる結城君を見かねて、三上君が結城君の口を手で押さえてやめさせてくれた。
「…あ。(コホン)悪かったね、ま、興味があったらいつでも言って。いくらでも本貸すから。」
「あ、ありがと…。」
キーンコーンカーン…
「あ、じゃ、ボク席に戻るね。また後でね。」
「うん。」
やっぱり結城君てものすごく変わった人だ。三上君はよく結城君と一緒にいられるな。…でもなんでだろう、彼らと一緒にいると、すごくわくわくしてくるのは……。
「──もと……柿本!!」
「え!?な、田口…ど、どうかしたの。」
「どうかしたって…放課後だぞ。ほら、みんなの鞄。」
「あ、ああ…。」
またぼうっとしてしまった。近頃はこんな事ばっかりだ。…でもそれより、宇都宮君達の事をすっかり忘れていた。せっかく今日から結城君達がボディーガードをしてくれるって言ってたのに。
「あの、ボク、今日から…ゆ、結城君達と…帰る、から。」
「は?結城?お前結城と仲いいのかよ。話してるとこ見た事ねーけど。」
「き、昨日から仲良くなったんだよ…。だから、その……。」
「宇都宮にはなんて言うんだ?」
「う……。」
「『お前らなんかと一緒に帰る程暇じゃありませんバーカ』って言えばいいんじゃない?」
「な、結城!?」
「結城君…。」
「彼は大事な依頼人なんだよ。お前らにかまってる暇ないんだ。さっさと鞄もって帰んな」
結城君は田口を睨みつけ、きっぱりと言い放ってくれた。その声の冷たさにボクも田口も一瞬たじろいだが、田口も負けじと結城君につかみかかった。
「っ…はあ?い、依頼人てなんだよ。俺らの事に口だすなよ!」
「弱い犬はよく吠えるね。文句があるなら涼に言ってくれるかな?」
「涼って──!?」
田口が言う前に、長身の三上君が田口を結城君から引きはがし、田口の胸ぐらを掴み上げた。その時の三上君の顔は…結城君の冷たい怖さとは違ったけど、そこら辺の不良なんかも逃げ出したくなっちゃうんじゃないかと思う程怖かった。
「…なんか文句あるのか?」
「な…な、無い!」
「ならさっさと行け。」
「はいいい!!!」
いつもボクに大口たたいてばかりの田口が、三上君の一睨みで大急ぎで逃げて行った。
「あ、ありがとう…。」
「別に君の為にやった訳じゃないよ。せっっかくの大事なカモを逃がすわけにはいかないからね!」
「(カモ…)でも、ずっとパシリにされてて、すごく嫌だったんだ…。おかげで助かったよ。本当、ありがとう。」
「…だったら嫌だって言えばいいじゃないか。」
「え、でも…ボク、そんな勇気ないから……。」
「なんでさ?この前は言っただろう僕達に。」
「あ、あれは必死だったから──」
「じゃあパシリにされるのはそんなに嫌じゃなかったって事か?君のすごく嫌ってのはそういう意味なの?それとも誰かに助けてもらうまで待ってるつもりだった?」
「それは…!」
「馨、もうやめろ。そこまで言う必要ないだろ。」
「…フン。僕そういう奴見てるとイライラするんだよ。悪いけど涼、今日は二人で帰ってもらえる?」
「お前──」
「別に彼が嫌で帰らない訳じゃないよ。ちょっと資料を部室において来たから先帰っててってだけだから。じゃ。」
「あ、馨──…。はぁ、ったく嫌なの見え見えだってんだよ。」
「……ボクって、そんなに気に触りますか?」
「っえ!?いや…そんな事ない!アレは馨が悪いだけなんだ。アイツ言い方がきついんだ。だから気にせず帰ろう、な?」
「…うん。ありがとう。」
…三上君は優しい人だな。必死にボクを慰めてくれて。……でも、結城君が言っている事は正論だ。
「……ボク、結城君に言われてよくわかったよ。」
「え、馨の事は気に──」
「そうじゃなくて。ボク、宇都宮君達にパシリにされるのすごく嫌だったよ、けなされるし。でも、逆らうのが怖かったんだ。アイツらに何かされるんじゃないかって思うと怖くて、つい、楽な方に流されてた。でも、それじゃいけないんだよ。結城君に言われた通り、誰かに助けてもらうまで待ってたらいつまでたっても逃れられないんだよね。」
「……。」
三上君はボクの話を黙って聞いてくれた。ボクは言うとすっきりし、そしてなんだか涙があふれて来た。三上君はボクの背中を優しくたたいて、慰めてくれた。
「…今日は、本当にありがとうね。ボクの話しっかり聞いてくれて。」
三上君は少し照れた様な仕草をした後、真剣に言ってくれた。
「いや…。でも、そういう事は溜め込まずに誰かに話さないと、いつか爆発するぞ。」
「……うん。ありがとう。こんなにちゃんとボクの話聞いてくれて、心配してくれる人、初めてだよ……。結城君みたいにはっきり指摘してくれる人も。そういえば、三上君と結城君て、どういう関係なの?ただの友達より、なんていうか、強い絆があるっていうか…。」
「……前に、馨にはいろいろ世話になったんだよ。」
「…?」
三上君はそれだけ言うと、「じゃあまた明日」と言って行ってしまった。気がつくとボク達はもう家の前まで来ていた。