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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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第四話 Tragedy of table turning(1)

「比奈。アンタ『お使いエンジェルさん』って知ってる?」

「し、知らない…。」

「エンジェルさんってあるじゃない?こっくりさんみたいな奴。そのエンジェルさんにお願いごとをすると、何でも叶えてくれるんだって!」

「私達の『お使い』してくれるから、『お使いエンジェルさん』。」

「ね、やってみようよ。」

「……いいよ。」

Tragedy of table turning

 夏休み開け、まだ暑くて、ボク達は部室でだらけてばかりいる。最も、忙しくしている時の方が珍しいくらいなんだけど。最近はただお茶を飲んで雑談するだけになっている。

今も、馨君は本に夢中だし、ボクと美弥さんと涼君は窓から校庭を眺めながらお茶しているだけだ。

「陸上部はすごいねー。こんな暑いのに校庭で練習してる。」

「ボク達なんかクーラーのついた部屋でだらけてるだけなのにね。」

「来須先生に見られたら流石に怒られそうだな。」

「ふふ、でもきっと馨くんに言い負かされちゃうよ。」

「あり得そう…。あ、華代ちゃんだ。」

 校庭では、陸上部や野球部が走っている。運動部は準備運動の一環として、校庭の外周を走るようだ。その一群の中に、華代ちゃんの姿もあった。汗をかきながら走る彼女は、いつもの柔らかい表情ではなく、ややきりっとしている。

「沢田さん、だよね。裕太君と仲良いんだっけ。」

「うん。明子ちゃんの親友で、ボクとも仲良くしてくれてるんだ。」

「へー…。」

 美弥さんが意味深な笑顔でボクの顔を覗き込む。急に顔を近づけられてとっさに目をそらしてしまう。

「な、何?」

「裕太くん、ああいう女の子がタイプなの?」

「ええっ!なんでいきなり!?」

「だってだって、幼馴染みの女の子とか、その親友とか、ありがちじゃない!」

「それは漫画の話だよ美弥さん…。」

「えー!じゃあ河井さん?それともクラスの──」

「ち、違うって!」

 ついつい必死に否定してしまう。これじゃあ逆に疑われそうだ…。でも、好きな人に好きな子探しされるなんて、複雑だ。美弥さんが探る様な目でボクを見る。

「やっぱり怪しー。沢田さんなんでしょ!」

「そ、そうじゃないってば!」

「へー、どの子だ?」

「ちょっと!涼君まで興味持たなくていいよ!」

「ほら、前から五番目の──って、もう準備運動終わったんだね。走り高跳びの準備してる!」

 校庭に目を移すと、彼女達は各々の種目の練習に別れて準備をしていた。華代ちゃんは専門の走り高跳び用のスタンドやマットを用意している。

「ほら、準備終わったみたい。あの二番目に並んでる女の子。」

 軽く身体を慣らした後、さっそく本番に入るようだ。ボク達が見守る中、先頭に並んでいた女の子が勢い良く走り出した。バーまでの短い距離を、全力で走るのが見える。バーの手前で、思い切り踏み込み、跳んだ。軽やかに弧を描く彼女の身体。しかし、背中がバーに当たるのが見えた。続いて、金属の激しい音と共にバランスを崩したスタンドが傾く。そのままマットに倒れ込んだ彼女の脚の上に、倒れた。


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