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当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。
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Midnight UMA(6)
「川上達は僕のクラスメイトですよ。」
「一応樹の舎弟だよな!」
「(どういう中学時代なんだろう…。)」
「まあ大分下っ端ですけど。あいつら結城先輩みたいなもやし体型ですし何の役にも立ちませんね。」
「ふーん…。一応接点があるのか。下らない不良ごっこのお仲間ね。」
「…馨、いい加減にしろよ。」
馨君は『もやし体型』に余程むかついているようだ。さっきから涼君の足を森野君達に見えない様に踏み続けて八つ当たりしている。ボクも美弥さんも注意するに注意出来ず、やり過ぎない様に見守っているだけだ。
「なんかいちいち突っかかってくる先輩だな。」
「大人気ないだろ?三上先輩もこんな人に付き合わされて迷惑でしょうね。」
「…チッ。」
「痛っ!!」
「どうかしました?」
「べ、別に何でも無い。」
「そ、それで、その三人てここ最近河童に襲われたんだよね?その事について聞きたいんだけど、いいかな?」
「あーあの噂ですか。」
「木下先輩の為なら何でも答えるッスよ!」
「ありがとう!その三人てさ、あ、あと北高の河島くんもだけど、なんか河童を怒らせるような事ってしたの?」
「さあ…。河島ってのは知らねえけど、そもそもあいつら別にそこまで仲良い訳でも無いと思うしな。」
「強いて言うなら家が近いって事ぐらいだよな。確か天の川公園と川の近くなんだって。」
「川って銀漢川?」
「ええ。三人とも同じくらいの時間に家の近くで襲われたって言ってました。」
「だっせーよな!橋の上から水掛けられたとか、足引っ張られて川に落ちたとかだろ?なんか黄緑の目を見たとか言ってるけどダサ過ぎてついた嘘なんじゃねーの。」
「その可能性もあるだろうけど。その子達の家と襲われたって場所と日時教えてくれる?」
森野君達と別れ、ボク達は元来た道をを戻っていた。
「ムカつく餓鬼共…。」
「馨くん落ち着いて!気にすることないよ。馨くんはもやしより頼りがいあるもん!」
「フォローになってないよ美弥さん。」
「 それはどーも!」
「痛えよ!八つ当たりやめろ!そんなにムカつくなら運動して筋肉付けろよ。セーター着て隠さなくてもすむだろ。」
「あ、そのセーターってその為だったんだね。」
「ファッションだ!余計な事言ってないで現場検証しに行くぞ。」
信憑性のある証言の中から襲われた場所と時間、全てがわかり、ボク達は次に実際の場所に行って調査する事になった。しかし、美弥さんはこの後用事があるらしく帰ってしまい、時間も遅いので今日は各場所を一人で少し調べて解散という事になった。
「ボクは銀漢川か…。」
ボクは淵本君が脚を引っ張られて川に落ちたという銀漢川に来ていた。銀漢川は結構長い川だけど、この辺りは川幅は狭く、両岸は坂のように高くなっている。坂の上は舗装された道だが、淵本君はこの道を歩いている時脚を引っ張られて川に転がり落ちたらしい。引っ張った奴の方を振り返ると、黄緑色に光る目をした黒い人影が、急いで逃げて行くのが見えたという。
「本当に河童なのかなあ…だとしたらどうして川から逃げるんだろう。」
本物の河童なら川に引き摺り込んだりするんじゃないかな。まあ、本物のわけないだろうけど。ボクは薄暗くなってきた河原に何かないか探しながらぼんやりと歩いていた。すると、近くに小さな洋風の建物が見えて来た。こんな所に随分お洒落な建物があるなと思っていると、慌てた様子で人影がそこに入って行くのが見えた。
Midnight UMA(7)
「…まさか、ね。」
銀漢川の近くに妙な建物、そこに不信な動きの小柄な人影。怪し過ぎる。いやいや、何を考えてるんだボクは。馨君に影響されたのかな。
「君、ここに入りたいの?」
「ひぇっ!?」
気付いたら、ボクはその建物の前まで来ていた。目の前には二十代半ばらしき男の人が微笑んでいる。独特の雰囲気の人だ。この建物の関係者だろうか。
「い、いえ!この辺には珍しい建物だなって思って!えと、うろついちゃってすみません。」
「ああ…。別に謝らなくてもいいよ。ここは教会なんだ。」
「教会、ですか。」
「うん。あまりそれっぽくないでしょう?町の人にも親しみやすいように宗教色が強くないような作りにしてあるんだ。」
「へえ…。」
「もし興味があるなら見て行く?あ、別に勧誘するつもりはないから心配しないでね。」
「い、いいえ。え、遠慮しておきます…。」
教会の関係者だったのか。若い人なのに、なんだか凄く落ち着き払っていて不思議な人だ。よく知らないが、宗教関係者独特の雰囲気なのかもしれない。ボクは少し苦手な感じだ。
「そっか。もし気が向いたらおいで。最近は若い人もよく来てくれるから。」
「……あ、あの。さ、さっき誰かが慌てて入って行くのが見えたんですけど、その人も…?」
ああ、あんまり関わりたくないって思ってるのにどうしてそんな事聞いてしまうんだ!ボクは質問してから後悔した。男は少し驚いた顔をしたが、また落ち着き払った微笑みを浮かべた。
「私はさっき君がいるのに気づいて出て来ただけだから見てないな。でも、神様に懺悔しに来た人かもしれないね。講堂は解放してあるから時々来るんだよ。そういう人の話は頼まれたら聞くけど、大体は聞かない様にしてるんだ。神様とその人の間の事だからね。」
「そうなんですか…。よ、余計な事聞いてすみません。えと、じゃあボクこの後用事があるんで、お邪魔しました。」
「ああ、うん。気を付けて帰りなさい。」
ボクは男の言葉を背中に受けながら急いで帰った。黄昏時だったせいもあるかもしれないけど、なんだか不気味な感じがした。宗教って聞くだけで、あまり良い印象がないからかな。
天の川公園。
「………なるほど、これか。」
「結城君!昨日夜遅くまで公園で何をしていたんですか!」
「部活動です。」
「その場合は届けを出すように言いましたよね!というか、部活動の延長は原則夜の八時まででしょう。」
「どーせ部活の指導どころか見にもいらっしゃらないのに。先生の監督不行き届きも問題じゃありませんか?」
「そ、それは…。すみません、ど、どうしてもそのー…。」
「顧問やるならその怖がり治してくれません?迷惑なんですけど。」
「な、なんとかします…って、そうじゃなくて!最近他校の生徒が不審者に襲われる事件も頻発してるんですから、気を付けて下さい!」
「あれ、馨君。それと…。」
「あ!裕太くん!裕太くんも日直?」
朝、日直の用事で職員室に行くと、馨君がボクがあまり知らない先生に叱られていた。途中から馨君が叱ってたけど…。誰だろうと思っていると、後ろから美弥さんに声を掛けられた。
Midnight UMA(8)
「美弥さん!おはよう。うん。美弥さんも?」
「そうだよ!何見てたの?」
「ああ、馨君が…。」
「馨君?本当だ。また昨日何かしたの?」
「うん…。なんか夜遅くまで一人で公園を調べてたみたい。」
「危ないなあ。来須先生も大変だね。」
「あの先生来須先生って言うの?」
「えっ知らないの!?うちの部活の顧問だよ!」
「そ、そうなの?!」
そう言えば、ボクは入部届けも無理矢理出されたせいでまともに部活の内容を知らないで入ったんだった…。改めて来須先生を見る。眼鏡に白衣姿のその先生は三十代くらいの若さで、馨君を叱る姿も何と無く頼りない。
「二年の化学の先生だよ。いつもヨレヨレの白衣着て、眼鏡もダサいからって女子にはダサ眼鏡って呼ばれてるんだ。しかもオカルト部顧問なのにすっごい怖がりでほとんど部活に来れないの。あ、でも優しい良い先生なんだよ?」
「こら君たち!用がないなら職員室から出なさい。」
「はーい!じゃあまた放課後ね、裕太くん!」
美弥さんが急いで職員室を出て行った。ボクも日直の仕事の準備をさっさとすませ、教室に急いだ。
「おい、馨!聞いてるのか?ヨハネスがノート見せてくれって。」
「ご勝手にどーぞ!」
馨君が涼君に数学のノートを投げつけている。大分イラついているようだ。普段教室でこんなあからさまな態度とらないのに…。
「痛えよ!ったく。」
「ご、ごめんね馨君。イライラしてる時に。すぐに返すからね!」
「来須先生に叱られたくらいでなんでそんなに機嫌悪くしてるんだよ。」
「うるさいな。来須先生は関係ない。」
「じゃあなんだよ。」
「放課後話す!」
そう言って馨君は乱暴に教室を出て行ってしまった。涼君とヨハネス君は呆気にとられた顔で、ただ馨君が出て行った方向を見つめていた。
放課後。結局馨君の機嫌は良くならないまま部活の時間になった。美弥さんが場を和ませようとニコニコしながら馨君に話しかける。
「馨くん!きょ、今日は何処に調べに行く?あ、その前に報告会だよね!私が調べたところはね──」
「もうやめた。」
「えっ。」
その発言にボク達は驚いた。そんな事気にせずと言った様子で馨君はソファーにうずくまるようにして手近にあった本を読み出した。完全に拗ねてる…。
「な、何でだよ。お前あんなに張り切ってただろ?昨日も夜まで調べてたんじゃないか。」
「そうだよ!今回は本当に本物っぽいのに!」
「何かあったの?」
ボク達はまるで子供のご機嫌をとる親のように馨君を心配した。その様子に、馨君は本からちょっとだけ顔をあげてうざったそうに見返してくる。
「そうだよ。夜まで調べたおかげで証拠を見つけたんだ。男子学生を襲ってたのは河童じゃない。」
「えっ!?」
「そ、それってもしかして犯人がわかったの?」
「個人まではわからないね。僕の知らない奴だし。てことで河童調査は終了。あー本当に紛らわしい事を…。」
馨君はぶつぶつ言いながらまた本に顔を埋めてしまった。ボクは吃驚してしまった。まさかこのちょっとの間で犯人に目星を付けられたなんて…。
「ちょっと待て!犯人の目星が付いてるなら警察に言った方が良いんじゃないか?」
「バカなの涼?ああ、愚問だったね。そもそもが不良を川に突き落としたりのセコい悪戯だよ?だから学校内で注意される程度なわけ。警察が取り合うわけないね。」
「で、でもあとちょっとで犯人がわかるわけでしょ?せっかくなら見つけちゃおうよ!これ以上被害者が出たら可哀想だよ。」
「なにそれ。うちは慈善活動部じゃありません。それに襲われるのは多分不良だけだよ。自業自得だね。」
「馨…『奇怪な事件にお困りの貴方、ご相談お受けいたします。』ってチラシに書いてるじゃないか。」
「怪奇現象でも奇怪な事件でもないー。普通の人間が起こしてるつまんない悪戯ー。」
馨君はよほどショックだったみたいだ。何を言っても聞く耳を持ってくれない。それどころかこっちを見向きもしない。そもそも、オカルト以外の事には殆ど興味がない人だから仕方ないのかもしれないけど…。
Midnight UMA(9)
「でも、放って置いたら森野君達も襲われるかもしれないよ。」
「それは愉快だね。僕を馬鹿にした罰だ。」
「性格悪いなお前…。」
「そっか!馨くん、ここで犯人を見つけたら森野くんに借りを作れるよ!襲われた子達は森野くんの手下なわけだし。」
「…。」
「言われっぱなしでいいの?馨くんの凄いところ見せ付けてやろうよ!」
少しの沈黙のあと、馨君は本を置いてソファーから立ち上がった。
「…そこまで言うならいいよ。」
「やった!さすが馨くんっ!」
まさかこんな簡単な事で動いてくれるなんて…。馨君も意外と単純なんだな。美弥さんもよく馨くんの扱いを知ってるなあ。そんな事を思ってると、馨君は帰る準備をし出した。
「そうと決まったら東中に行くぞ。さっさと片付けてやる。」
「東中の生徒が犯人なのか?」
「多分ね。でも今日は現れないはずだ。今まで奴が出たのは金曜日だけだから。」
「そういえばそうだね…なんか関係あるの?」
「この手の変質者は大体自分のルールがあるんだよ。そうそう変えないさ。部室閉めるぞ。あと涼、森野の番号知ってるなら連絡しろ。」
東中に着くと、校門前に森野君と以前一緒にいた友人達がいた。まだ生徒が多く残っているようで、校門から多くの生徒が見える。
「なんか用ですか結城先輩。」
「HRってまだ終わったばかりだよね。てかさ、森野君にしか連絡してないはずなのに随分人数が多いね。一人じゃ来られないの?」
「相変わらずムカつくなアンタ…。用件を言えよ!」
「噛み付くなよ。みんな見てるよ?昨日聞いた話なんだけどさあ、犯人がわかったから教えてあげようと思って。」
「えっマジっすか。」
「すげえ、さすが三上先輩の友達っすね。」
「チッ…。名探偵気取りですか。どうせ下らない話でしょう。」
「ああそうだね。下らない犯人さ。弱そうな不良に目星つけて子供騙しのしょうもない悪戯して喜んでる馬鹿だよ。それも、自分のクラスや虐められた不良に意趣返ししてるつもりなんだろうね。」
「おい馨、声大きいぞ。目立つだろ。」
「あの!じゃあ樹のクラスの奴なんすか!?」
「やっぱ河童なわけなかったんだな。」
「そうだよ。私刑にでもなんでもしなよ。僕は明日から天の川公園で目撃される小人調査の予定があるから失礼。」
そういうと馨君はくるっと後ろを向いて帰ろうとした。一体なにしに来たんだろう…。これじゃあ森野君の気を逆なでしただけじゃないのかな。
「…ちょっと待ってください。そいつの名前は?」
「…。」
「…はっ。なんだよ。わかってねーんじゃん。名探偵気取ってたワリに大した事ないですね!その程度の推理ならオレでも出来そうだな!わざわざ教えてくれてどうもありがとうございましたー。」
森野君は勝ち誇ったような顔をしたけど、馨君は何も言わず天の川公園の方へ歩いて行ってしまった。ボク達もよくわからないまま馨君の後を追う。
「馨、何しに来たんだよ。意味わかんねえ。」
「だろうね。別に森野に会うことが目的だったわけじゃないから。」
「えっ?じゃあどうして森野君に連絡したの?」
「東中の番長さんが北高生の集団と話してたら目立つだろ?しかも校門で。それが狙い。」
「わかった!犯人にさっきの会話を聞かせたかったんだね?」
「だからあんなに目立つところで大声で話したのか…。」
「そう。襲われた奴らの家はみんな同じ地域だし、森野のクラスメイトを調べて家の近い奴を見つける方が確実だけど、面倒だし、森野に聞くのはムカつく。」
「確かにねえ。義人くんもいないしね!」
「そもそも、どうして河童じゃなくて人間だって気づいたの?」
「今から見せる。もっとも、明るいうちはよくわからないだろうけど。」
ボク達は馨君が昨日調査した天の川公園に来ていた。しばらく馨君について行くと、南高の河島君が突き落とされた階段の近くの茂みに着いた。
「…これが光る目の正体だよ。」
Midnight UMA(10)
馨君が指差す地面を見る。一見普通の地面にみえるけど、よく見ると、何か黄色いペンキの様なものがついている枯葉が幾つかと、すぐ近くの木の幹にはこすった様な黄色い後がある。これが光る目の正体って…どういう事だろう?
「…これって何?」
「これが昨日の夜に撮った写真。」
馨君が携帯の写メを見せる。そこには、黄緑色に光る枯葉と木が写っていた。
「あ、蛍光塗料!」
「ご名答裕太。明るいところじゃ黄色く見えるだけだけど、暗くすると黄緑色に光るんだ。カワハギ君が言ってたよね、見たことのある色だったって。蛍光塗料の光は色んな所に使われているし、独特の色だ。しかも現場の近くに零れているのを見ると、河童の噂と無関係じゃないだろうね。」
「でも、これをここで目の周りに塗ったのかな。」
「額に塗ったんじゃないかな。どう塗ったかはわからないけど、前髪で隠れたりすれば人間は単純だから、暗い中で光る部分を目だと勘違いするよ。」
「でも、なんでこんなもの顔に塗るんだ?」
「儀式だと思うよ。金曜日しか人を襲わない事と同じさ。何か自分の中でルールがあるんだ。不良しか狙わないのは制裁を加えているつもりか、何かコンプレックスがあるのかもね。まあ僕はプロファイラーじゃないからわからないけど。」
「恨みがあるからじゃないの?」
「個人の恨みとは違うと思うよ。襲われた奴らは特に仲が良かったわけじゃない。共通点は家が近い事、華奢な体格って事くらいだ。」
「なら、なんで森野のクラスメイトだってわかったんだ?」
「第一被害者から第三被害者まですべて森野のクラスメイトだ。最初は誰でも慎重になるだろ?犯人は多分手近にいる人間からターゲットを絞ったんだ。同じクラスの人間三人が襲われたってことはクラスメイトの可能性が高い。少なくとも、東中の生徒だろう。そして三回も上手く行って調子に乗った犯人は高校生にも手を出すことにした。それが先週だね。そして高校生の方にも河童の噂として流れたってわけだ。」
確かに、筋が通ってる。でも、そうだとしたらまたおかしな考えの異常者なんじゃないだろうか。いくら中学生とはいえ、そんな人にまた関わらなきゃいけないというのは正直怖い。馨君にまかせて、本当に大丈夫なんだろうか…。
「でも、どうして校門で森野と話す必要があったんだ?」
「森野のクラスって事は、当然面識があるはずだ。不良ばかり襲うあたり、あいつも候補に近い。強くて手が出せないにしろ、舎弟のカワシモ君達を襲った分当然動向に気を配っているだろう。そこであんな目立つ所で自分の話をされていれば絶対に注意を向ける。それで挑発したんだ。」
「川上な。なんで挑発する必要があるんだよ。」
「明日になればわかるはずだ。さて、帰りながら明日の予定を説明するぞ。」
「えっ!本当に小人調査するの?」
「小人ね…。ある意味そうなるかも。」
「?」
「とりあえず、明日、涼と美弥、裕太は一旦──」
金曜日の夜十一時手前、道路の灯りがわずかに届く、暗い天の川公園を歩く人影が一つ。発光の弱い、今にも電池が切れてしまいそうな懐中電灯片手に一人しんとした公園の奥の方に進んでいく。時折茂みを照らしたり、立ち止まったりして、本当に小人探しをしているように見える。しかし、ついに懐中電灯の灯りが薄れ、消えてしまった。カチカチとスイッチをいじるが付かない。ふと、後ろに視線を感じて振り返ると、緑色の光の尾を引きながら小柄な人影が棒を振りかざして突進してきた。
「い、いやあああ!」
「?!」
小柄な人物は一瞬何が起こったのかわかっていない様子だ。彼は棒を持って突っ込んだは良いが、相手にタックルを食らって尻餅をついたのだ。彼の顔に懐中電灯の灯りが当てられる。彼はさぞ驚いた事だろう。そこには自分が狙ってた人物と同じ格好をした女の子が立っていたんだから。