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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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第五話 Missing Days(8)


Missing Days(8)

「…っぷ、あはははは!」

「…?」

 堪えきれないという様子で真寿美さんが笑い出した。ボク達は訳がわからずただ呆然と真寿美さんを見つめた。真寿美さんは一しきり笑うと、タバコを消して立ち上がった。

「…やめちゃったくらいで、か。まさか女子高生に怒られるとは思ってなかったよ。」

「ご、ごめん。」

「いや、怒ってるんじゃないんだ。おかげで目が覚めたよ。……そうだよなあ、過ぎた事を何時までも気にしても仕方ないよな…。俺が馬鹿だったよ。ありがとう、美弥ちゃん。…美琴も、嘘つかせてごめんな。」

 優しく美琴君の頭を撫でる。美琴君はまだ状況が理解できてないのか、不安そうな顔で真寿美さんとボク達を交互に見た。小さな子にはまだ難しいようだ。美弥さんが美琴君の前にしゃがんだ。

「美琴くんも!ちゃんと本当のことを叔母さん達に言って犯人逮捕してもらおう?」

「でも!アイツが怒ってまた来たら…。」

「大丈夫!そんな事絶対させないよ!真寿美くんも美琴くんのお父さんも私より強いから絶対に守ってくれるよ。」

「でも…。」

「もし何かあったら私に電話して!すぐに戻ってくるから!ね?」

「……うん…っ。」

 怖かった事を思い出したのか、美琴君は目に涙を溜めて美琴さんに抱きついた。

「…美琴くん、真寿美くんと一緒に叔母さん達にちゃんと伝えられたみたい!」

 電車の中でメールの返信をしてぱちんと携帯を閉じて微笑む美弥さん。その様子に先程の美弥さんの頼もしい姿が重なって少し胸が高鳴る。普段はお茶目な美弥さんだけど、あんな風にしっかり人を怒る事もできるんだな。

「みんなに迷惑かけちゃってごめんね。」

「そんな事ないよ。…美弥さんカッコ良かったよ、二人を諭す時。」

「えっそうかな!?えへへ。ありがとう裕太くん!でも馨くんの推理がなかったらわからなかったよ!ありがとうね馨くん!」

「お礼を言うくらいなら天狗に会わせて欲しいね!結局ちょっと文献読んだくらいで終わっちゃったじゃないか。」

 そう言えば美琴君に付き合ってばかりで天狗の祠とか言うのにも行けず、結局ただの旅行で終わってしまった気がする。馨君がムクれるのも無理はないだろう。

「でもお風呂で真寿美くんから話聞いたでしょう?」

「ほとんど馨が一方的に蘊蓄語って終わったけどな。」

「これでも抑えたつもりだよ。……って、なんで美弥が知ってるの?」

「(ハッ!)ちち違うんだよ!?女湯が静かだから聞こえちゃっただけで、別に涼くん達の様子が知りたかったとかじゃないからね!腹筋を想像して悶えたりしてないからね!!」

 あわてて否定する美弥さんはいつも通りだ。馨君達も呆れている。

「もうちょっと自重しなよ…。」

「流石に先生いる前でそんな事…あれ、先生は?」

「前の車両にでもいるんじゃないの?」

 てっきり端っこに座っていたと思っていた来栖先生の姿が見えない。その時涼君の携帯が鳴った。

「あ、電話だ。…来栖先生から。」

「…もしかして。」

『もしもし!三上君!い、今皆さん何処ですか!?馨君に連絡しても繋がらないし、私を置いて勝手に帰らないでくださ──』

「ごめんなさい先生。電車の中なんで切りまーす。」

『え、ちょ──』

 馨君が涼君から携帯を無理矢理奪うと一方的に切ってしまった。その顔は何処か嬉しそうだ。

「…まさか馨君、わざと置いてきたの?」

「そんな事ないよ。先生がトイレに行ってくるって言うから先に着てた電車に乗って待ってただけさ。」

「それって待ってないじゃん!ど、どうするの!?」

「勝手に帰っちゃダメなんだろ?ここから乗り継いだ先に天狗が住んでるっていう小さい山があるらしいんだ!そこに行って暇潰ししようよ。」

 身を乗り出して地図を見せる馨君。どうやら選択権はないらしい。その瞳は外でボクらを照らしている太陽のように輝いていた。



Fin


あとがきという名のいいわけ。
お待たせした割に出来が悪いです…。ごめんなさいー!
補足ですが、美琴くんのお家は旅館経営という事もあって地元じゃ結構金持ちです。
なので誘拐犯は身代金目的で誘拐したのでしょう。(逮捕もされてないので詳細かけなかったのですが。)
なかなか話がかけなくて、なかば強引に書いてしまったので書いてたときは本当に苦しかったです…。
次の話は楽しく書いたので楽しみにしていただけたらと思います!
読んでいただいてありがとうございました!では!



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