忍者ブログ

Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

第三話 Midnight UMA(4)


Midnight UMA(4)


 馨君と涼君があからさまに質問した美弥さんから目をそらす。しかも、返答までの妙な間はなんだ?明らかに義人君に悪い事があったような言い方だ。

「(…馨君、義人君に何かしたの?)」

「(君に余計な話をした罰だよ。)」

「(そ、それって馨君達の中学の時の…?)」

「(わかってるなら聞くなよ。ま、心配しなくても身体に痕が残るような事はしてないから。)」

「(そ、そうですか…。)」

「義人くん風邪引いちゃったのかなあ。心配だね、涼くん。」

「そ、そうだな。」

「さ、無駄話はやめて行くぞ。涼、やれよ。」

「…わかったよ。」

 馨君と涼君が意味深な会話をしている。何のことだろう?ボク達は片付けをすると南高へ向かった。

「まずは階段から突き落とされた南高のカワハギ直也だな。」

「河島だろ。」

 南高は市の真南にあり、北高とは真逆の方向にある。ボクは南高の生徒が怖くて今までこの辺りに来た事はなかったから少し不安だ。下校時刻なのもあって、多くのガラの悪そうな生徒達が出て来る。しかも、こっちは北高の制服でとても目立つ。因縁でも付けられたらどうしよう…。

「…あ、いた。丁度帰るとこか。」

 馨君が見ている方向を見ると、ピアスを付け、髪を染めた猫背の少年がいた。如何にも不良少年と言った出で立ちだ。少年、もとい河島君もこっちに気づいた様で、怪訝そうにこちらを見ている。ボクは怖くてつい目をそらしてしまった。そんな様子を見兼ねたのか、ここで待つように指示をして馨君と涼君は物怖じせず彼に近付いて行く。

「君がカジワラ君?」

「は?ちげーよ。お前誰?」

「いや、なんでもない。河島だよな。」

「んだよ…──って、み、三上!?」

 河島君はさっきまでの不機嫌そうな態度とは打って変わって冷や汗をかき、目が泳いでいる。涼君は中学時代は有名な不良だったんだ。無理もないんだろう。きっと彼の頭は何か涼君を怒らせる様な事をしたんじゃないかとか、どうやって切り抜けようかとかでいっぱいなんだろうな。

「中学以来だな。久しぶり。」

「そ、そうだな。み、三上は、北高行ったんだよな。元気そうじゃん。」

「ありがとう。」

 涼君が逃げられないようにか、さりげなく河島君の肩に手を掛けるのが見える。微笑んではいるが、目には以前田口を睨んだ時の様に有無を言わせない迫力があり、威圧的だ。もしかしたらさっき二人が話していたのはこの事だったのかもしれない。ボクなんかじゃあの時点で口も聞けなくなりそうだな。河島君の顔が徐々に青くなっていっているのがわかる。

「…。…あ、あのさ、俺、なんかした、か…?」

「教えてもらいたい事があるんだ。」

「なに…?」

「河童の事だよ。君、河童に襲われたんだろ?」

「は…?…あ、ああ…、あれか。わかった。お、教えるからさ、そこのマックいかね?」

「いいよ。裕太、美弥、マック行くよ。」

「はーい!行こ!裕太くん。」

「う、うん…。」

 ボク達はすぐ近くのマックに入り、六人席のテーブルに腰掛けた。周りは南高の生徒だらけで、非常に騒がしい。でも、ここなら変な話をしても誰にも不審がられないだろうな。河島君は無理矢理涼君の隣に座らされていたたまれなそうだ。

「…ふーん。じゃあ噂と大して食い違いはないわけか。」

「ねえねえ河島くん!目が光るってどんな風に光ったの?」

「知るかよ…。」

「お前見たんだろ?」

「な、なんかぼんやりって感じでよくわかんねーけどどっかで見たことあるような色だった。で、でも一瞬だからマジでわかんねーんだって三上!」

「色?黄緑色だったんだよね。」

「ああ…。あとは全身真っ黒だったと思う。な、俺が知ってんのはこれくらいだよ。もういいだろ?てか、なんでこんな事聞くんだ──」

「そうだな。涼、美弥、裕太。次行こう。…ああ、カザマ君?僕達が聞いた事他に言うなよ。言ったら…。」

 馨君が涼君に視線だけ向けてから、河島君に不気味に微笑んだ。

「…怖~い神様からの天罰があるかもよ。」

拍手[0回]

PR