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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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第二話 Beautiful Vampire(5)

Beautiful Vampire(5)


 放課後、いつもの様に部室を訪れると、いつもの三割増しの仏頂面で座っている馨君と、何となく険しい表情の涼君がいた。馨君はどうも昨日上手くいかなかった事が気に入らないらしい。どう声をかけようか悩んでいると、また紙に何か書き出した。

「…次だ。」

「…もういい加減にしろよ。意地になってるだけだろ。」

「は?一度も作戦を成功させてない癖によく言うよ。次は茨のトゲを集める習性を利用して──」

「馨!」

 涼君は立ち上がり、馨君の目の前の机を叩いた。部室の空気に緊張が走る。

「…何?」

「もういいだろ。大体俺は最初から反対だったんだ。お前ももう本当はヨハネスが吸血鬼だとか疑ってないんだろ。」

「り、涼君、馨君…。」

「今回はお前が家にいないせいで暖ちゃんに招かれてしまって失敗したんだけど。一度も成功してないのに偉そうな事言うな。」

「…あのなあ、お前が何をしようが俺を振り回そうが構わないが、ヨハネスにあんまり迷惑をかけるなよ!あいつ、日本で初めて友達が出来たって凄く喜んでるんだぞ。それなのにこんな事、いじめと変わんねーだろ!」

「お優しいね涼君は。妙にヨハネス君に肩入れするじゃないか。もしかして吸血鬼に血でも吸われた?」

「ってめえ…!」

「そんなに嫌なら結構。僕一人でやるから。」

「っ。…最っ低だなお前。もう言うだけ無駄だな!」

 涼君はそういうと鞄を引っ掴み乱暴に部屋を出て行った。とても引き止めることの出来ない雰囲気で、ボクはおろおろするばかりだ。馨君を見ると、紙とペンをしまって帰る準備をしている。

「……馨君。今の言い方は悪いよ…。」

「…。悪いけど今日は部活中止。美弥が来たら言っておいて。」

「馨君。ちゃんと、謝りなよ。」

「………わかってるよ。」

 聞こえるか聞こえないかの声で呟くと、馨君は部屋を出て行った。

ドン!

「うわっ。」

「悪い…──あ、ヨハネス?」

「涼君!…どうしたの?そんなに急いで。」

「別に…。お前は帰りか?」

「うん。…ねえ、突然で悪いんだけど、もしよかったら、今日はうちに来ない?」

「え?」

「あ、いきなりだし無理ならいいんだけどね!お礼も兼ねて、どうかな。馨君達も探してたんだけど…──」

「あいつはいい。お前も、もうあんまり馨に関わらない方が良いぞ。」

「な、なんで?」

「いいから。今度、美弥と裕太も誘って──」

「あ!もし涼君がいいなら今日おいでよ。実は次うちに人を呼べるのって大分後になっちゃうから。いい、かな?」

「あ、ああ…。」

「えー!それで帰っちゃったの二人とも!?」

「う、うん。」

 その後、遅れてやって来た美弥さんに、ボクはさっき起きた事を説明していた。

「二人がそんな本気で喧嘩してるとこなんて見た事ないから心配だね…。」

「そうだね…。でも、馨君も一応反省してるような感じがしたけど…。」

 ボクの事を心配してくれたのか、美弥さんは思い切り立ち上がるといつもの笑顔でボクを見た。

「大丈夫だよ!二人ともうじうじするような性格じゃないし、きっと明日には元通りになるよ!」

「…うん、そうだよね。帰ろっか。」

 ボクはしばし美弥さんの優しさと笑顔を噛み締めてから、帰り支度をし、二人で学校を出た。他愛もない会話をしつつボク達が帰り道を歩いていると、前に妙な人影が見える。街頭から少し離れたところに佇むその人影は微動だにしない。以前の事件もあってボク達が警戒しながら進んでいると、なんとそこに立っていたのは、馨君だった。馨君は向かいの家を見つめているようだ。

「か、馨…君?」

「っ!…裕太と美弥か。」

「な、何してるの?先に帰ったと思ってたのに。」

「…。その家に、ヨハネス君と涼が入って行くのが見えて。」

「えっ?」

 どうも馨君は帰りの途中、ヨハネス君と涼君が向かいの家に入って行くのを見て、それからずっとここで様子を伺っていたようだ。



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