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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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第六話 Specter of school festival(3)


Specter of school festival(3)

「きゃあ可愛いー!」

「今こっち見たよ!」

「アタシじゃんけん勝った!一緒に写真撮ろうー!」

「は、はい。」

 なんだこの人気は…!普段冴えない男子学生のボクが、目があっただけで女の子にきゃあきゃあ言われ、写真を強請られるなんて。こんな事あって良いのか?まあ女装だけど。

「裕太くん、すっごい人気だね!嫉妬しちゃうよ!」

「女装じゃなきゃもっと嬉しいんだけどね…。」

 そういう美弥さんも男子に人気だ。特にオタクっぽい人ばかりだけど。臆せず笑顔で接する美弥さんがちょっと心配だな。馨君の作戦のおかげかボク達の出し物は盛況だ。

「もう疲れた…。」

「涼くん頑張って!馨くんがいない今、私達がここを切り盛りしなくちゃいけないんだよ!」

 普段それ程にこにこしている方ではない涼君。女子相手にずっと愛想良く接客するのによほど体力を使っているようだ。

「ほらほら!シャキッとして!笑顔笑顔!」

「無理だよもう顔が引きつる。」

「わがまま言わないの!馨くん怒っちゃうよ!」

「すみませーん!オレンジジュース一つくださーい。」

「はーい!ジュース一つにじゃんけん権が付きますー。」

 そう言いながら美弥さんはお客さんの元へ小走りで寄って行った。しかし、先程美弥さんが言ったように馨君は妙に張り切っているようだ。なんだか違和感を感じる。

「ねえ涼君。馨君、幽霊だけが目的にしてはやけにやる気だよね。」

「ああ…。来須先生に言われたんだよ。俺達の部活、本だけじゃなく妙なものに結構金を使ってるだろ?この企画にも美弥がこだわるからかなり費用がかかったし。売り上げを上げないと部費がもうないらしい。」

「え!そうなの!?」

「元々少ない部費でよくここまで保ったと思うけどな。だから馨はなんとか売り上げをあげて部費の足しにしたいんだと。」

「あー負けちゃった!すみません!もう一杯ジュースください!」

「はい。」

 小さくため息をつくと、涼君はお客さんのところに向かっていった。ボクも戻らなくちゃ!

「全っ然現れないんだけど!!どう言うこと?美弥!」

 一日目が終了した後、馨君は相当イライラした顔で美弥さんに詰め寄った。どうも美弥さんが文化祭に参加したいが為についた嘘だと思っているようだ。

「お、怒らないでよ馨くん!おかしいなぁ。絶対毎年現れるって聞いてたのに。」

「なにもおかしな事はなかったの?」

「平和過ぎるくらいに平和だね!他の教室の音も聞こえにくいし、本を読むのには快適かもね!」

 不貞腐れた様子で飾り付けられた椅子に腰掛ける。馨君の策略通り好評で、景品も残りが少ない。飲み物も明日買い足す予定だ。

「へえ。外はあんなに煩かったのにね。」

「壁が他の教室より厚いんだろ。だいたいその幽霊に会ったって言う生徒は誰なんだ?」

「えーっと、一昨年は卒業しちゃった人で、去年は二年の岩瀬先輩だよ!」

「岩瀬って…あの岩瀬萌香先輩?」

「そう!幽霊信じてなさそうなあの岩瀬先輩が言ってるんだから絶対本当だよ!」

 『お使いエンジェルさん』の件で階段から落ちたあの岩瀬先輩だ。直接会った事はないが、義人君の話では大分肝の座ったあの人が…。

「サイアク。義人に聞き込みさせるか。」

「義人は多分無理だぞ。軽音部のライブでベースと演劇部で音響の手伝いやるらしい。明日も俺達の手伝ってくれるしな。」

「なにそれ!思いっきり文化祭満喫じゃん!羨ましい!」

「情報提供の代わりか…。チッ。」

 馨君は苦虫を噛み潰した様な顔をした。よほど岩瀬先輩が嫌な様だ。まあ、キャピキャピのギャルだもんな。正直ボクも得意なタイプではなさそうだ。

「…仕方ない。明日聞き込みだ。チャンスはあと一日だけだからな。なんとしても見つけるぞ!」




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