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当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。
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番外編1(10)
「僕を調べてたのか。まあね。どんな奴か確かめたかったから。」
「お前…涼を利用するために取りいってんだろ!南高の奴らから涼を救ったって聞いてたけど最低だな!」
「義人!よせ。あんまり大きな声出すなよ。病院だぞ。」
「涼はいいのかよそれで!?利用するために近づかれたんだぞ?」
「…ああ。」
「涼!」
「どんな理由でも助けられた事にかわりはない。ここまで俺を導いてくれたのは馨だ。俺は馨を信じてる。」
「なんで…。」
今まで気だるそうにしていた涼の久しぶりのまっすぐな瞳を見て義人は口をつぐんだ。それを見計らったかのように結城がノートを閉じた。
「さあ終わった。三問は出来たか?」
「えっ!ま、まてよ。今さっきまで話してて…。」
「だから見直しと答え合わせまで全部終わらせてから言ってるんだよ。何甘えてんの?…おい、まだ二問目の途中じゃないか。罰としてそれ終わったら漢字書き取り百回な。」
「まじかよ…。」
「君に無駄に出来る時間は一秒もないんだよ。口答えする暇あったら頭を働かせろ!」
義人はいたたまれなくなって病室を出た。親友が自分の知らない間に変な奴に好き勝手されているところを見ていたくなかった。それに、それを何とか出来る頭もない自分が悔しくて、とてもその場にいられなかったのである。仕方なく帰ろうとした時、廊下に結城が出てきた。
「待ちなよエジマ君。」
「なんだよ…。つか江藤なんだけど。」
「君に弁明しておこうと思ってね。」
「は?弁明?何の為にだよ。お前が言った事は事実だろ?」
「そうだよ。でも多分君は誤解してると思って。」
「誤解だと?」
「確かに僕は涼の力を利用しようと思ってる。これからもね。でも彼と過ごすうちに打算だけじゃなく、純粋に仲良くなりたいと思ったんだ。」
「…。」
「僕はこの通りあまり良い人付き合いが出来ない。うわべだけ取り繕うのは得意だけどね。でもそんな僕を信頼してくれている涼を、僕も同じくらい信頼してる。あの不良どもと違って道具として見ているわけじゃない。」
「…なんでそんな事俺にいう必要があるんだ。」
「一応涼の友達として君とも仲良くなりたいからさ。よろしくね。」
「……。よろしく。」
未だ結城は何を考えているかわからなかったが、どうも嘘をついているようには見えなかった。義人は渋々差し出された結城の手を握り、握手をした。
「良かった。誤解は解けたみたいだね。」
「まだ完全に信頼したわけじゃねーよ。でも、涼を助けたわけだし、な。あ!涼をいじめるのはやめろよ。入院長引いたらどうすんだ!」
「一種の思いやりだよ。…でも。」
妙に結城が口ごもり、神妙な表情をした。義人は怪訝に思って結城の顔を覗き込む。
「で、でも何だよ?」
「…あの日、普段あんだけ気取ってた涼が地面に這いつくばって泣いてる所見てから、何だか妙に心がざわつくんだ。」
「え、な…。涼が泣いたって…!?なあそれどういう事だ?教えてく──」
「もっと泣かせてやりたいってね。」
「──!」
「…じゃ、また。」
一瞬結城が恐ろしい微笑みをしたように見えたが、すぐに病室に戻って行ってしまった。義人はぞっとしてそのまま動けずにいた。
「ハッ…。…やっぱあいつ、絶対アブねえ!」
義人は一瞬涼の元へ戻ろうと思ったが、どうしても結城がいると思うと行く気にはなれず、そのまま出口へ向かった。『情報通』として、二人に何があったのか調べ尽くす決意を胸に秘めて。