忍者ブログ

Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Albtraum番外編2(1)

またまた番外編で失礼します。
今回もオカルトがあまり関係ないストーリーですが、
新キャラ登場の回です。お楽しみいただけたら幸いです。



番外編2(1)



 暖かい、から徐々に暑いに変わりつつある今日この頃、ここ最近は特に目新しいものもなく、部室でのんびりする日が続いていた。今日は馨君を除くボク達で美弥さん自作のお菓子を目の前にお茶という名の心理戦を繰り広げていた。特に今日はマドレーヌだ。こういうしっとりしたお菓子の時はクッキーの倍後味が恐ろしい。馨君はというと、早々に美弥さんの鞄から覗くラッピングを見て、『ツチノコ生態学』を読み耽ることに徹し不戦勝だ。部費で買ったという電気ポッドから嬉々としてお茶を用意してくれる美弥さんをよそ目に、ボクと涼君は互いをちらりとみると、さも平静を装った。

「…もうすぐ夏だねー。」

「そ、そうだな。そろそろ長袖も暑くなるな。」

「ボク、夏になると暑くて寝付けなくなるんだよね。」

「わかるー!私も冷えピタ貼って寝たりするよ!」

「俺もなかなか眠れなくて、朝寝坊したりするよ。」

「あ、えと。良かったら、私、朝電話して──」

「あーなんだか喉乾いちゃったな!ボク飲み物買いに行ってくるね!」

 ガシッ

「っ!」

「何言ってんだよ裕太。お茶なら目の前だぞ。」

 しまった!つい美弥さんが涼くんに目覚ましコールするのを阻止するためとは言えあまりに不自然な事をしてしまった!この流れじゃお茶を飲まないのは不自然だ。しかし飲めば必然的にお菓子に手を伸ばさなくてはならない。というか勧められる!涼くんが哀れむような、しかしチャンスだという顔でボクを見る。

「あ、あーそういえばそうだよね。ボクなに言ってるんだろう。」

「うふふ。裕太くんたらー。」

 くっ、これはもう回避出来ないな。しかし、何とか時間稼ぎをしたい。うまくやれば涼君も巻き添えに出来るかもしれない。ボクは差し出されたお茶を一気飲みして、少し冷静になった。

「そういえば、涼くんは喉乾かないの?さっきから全然飲んでないよね。」

「え。いや、うん。俺は全然!」

「そうなの?凄い汗出てるじゃん。」

 冷や汗なのはわかってるけどね。死なば諸共だ!

「本当だ!涼くん大丈夫?」

「ほら、飲みなよ。お菓子もあるよ?」

 もう逃げられないよ。涼君を見ると、悔しそうな表情の後、美弥さんのニコニコ顏を見て観念したように湯呑みを手にとった。ボクは束の間の勝利を喜んだが、結局自分も食べなきゃならない状況にいることを思い出し、お茶のおかわりを貰った。

「今日はとっても上手く焼けたと思うの!どうかな?」

 期待と不安が混じった瞳で見つめる美弥さん。とても食べないなんて選択を出来るわけがない。ボク達は湯呑みを手にぎこちない表情をしていた。美弥さんは既にお茶を飲みながらお菓子を食べている。正直、このお菓子を美味しく食べられる彼女の舌がとても心配だ。ああ、本当に、何か手立てはないだろうか…。ボクは最後の抵抗と言わんばかりに周りを見回した。その時、教室の扉が控えめな音を立てて開いた。

「あのぉ、ここがオカルト研究部、ですか?」



拍手[0回]

PR