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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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第一話 Zodiac Murder(4)


Zodiac Murder(4)



…翌朝、部屋で学校の支度をしていると、下から母さんの呼び声がした。

「裕太ー!お友達が迎えに来たわよ~。」

「え、お友達って…。」

「おはようカキノボリ君。」

「柿本だろ。おはよう。」

「うわ!結城君、三上君!?」

「裕太のお友達が訪ねて来たのって何年ぶりかしら~。しかもこんなイケメン二人なんて!」

「いやあ僕も彼にこんな美しいお母さんがいるなんて知りませんでしたよ~。」

「んもうお世辞も上手なのねぇ~!ちょっと待ってて、今ケーキ持ってくるから。」

「お母さん朝からケーキだなんてそんな気を使わないでいいですよぉ。帰りにいただきますから!」

「もらう気満々!?」

「貰えるものは貰っておかないとね。」

「(みみみみ、三上君!?ゆゆ、結城君キャラ違い過ぎじゃない??!)」

「(……ああ、馨は大人には八方美人なんだ…)」

 いつも仏頂面で近寄りがたい結城君が家の母親にキラキラの笑顔で話してるのを見るとなんだか薄気味悪い……。ルンルンの母さんに見送られ、角を曲がると、結城君はいつもの調子に戻った。

「(コホン)えー……何か?」

「「いや別に。」」

 結城君はあまりのギャップで彼を凝視していたボク達を一瞥すると、何事もなかったように話し始めた。

「昨日調べたんだけど、なぜカキノモリ君が狙われたか何となくわかったんだ。」

「え!」

「どうやら星座だけでなく誕生日にも関係しているらしい。」

「誕生日?」

「詳細は放課後オカルト部で話すけど、第一の被害者、山里由梨江十五歳は九月六日生まれ。次に殺されたのは二年の戸田悠磨十六歳は十月五日生まれ。二人とも星座のちょうど真ん中あたりに生まれている。戸田悠磨の方は一日ずれてるけど。」

「それがなんなんだよ。」

「それは放課後オカルト部で話すよ。紹介したい人もいるし。」

「紹介したい人?」

「来ればわかるさ。」

 放課後、三上君は掃除なので、ボクは結城君に連れられてオカルト研究部の部室に行った。中は想像よりも簡素で、てっきりドクロや十字架が陳列しているのかと思っていたボクは少しほっとした。

「もちろん本当は飾りたかったけどね。二人が駄目だって。」

「二人?」

「ああ、もうすぐ来るよ。」

 結城君が言った通り、少しすると長髪の綺麗な女の子が入って来た。

「彼女は同じオカルト研究部の木下み──」

「うわぁ!!この人が馨くん達が言ってた柿本裕太くん!?ヘェ~良く来てくれたねぇ~!!私木下美弥(みや)!よろしくね~!」

「あ、はい……よろしく…。」

「ちょっと美弥!彼がひいてるだろ。そんな興奮するなよ。」

「え~だってこんな寂れた部室に来てくれる人なんてそうそういないんだもん!」

 結城君が目をキラキラさせてボクに抱きついていた木下さんの手を離させてくれた。

「悪かったね…。美弥はいつもああなんだよ。」

「はぁ…。あの…二年生もいないんですか?」

「……裕太くん、ちょっとこっち来て。」

「え?」

 木下さんはボクの手を取り隅の方へよると、口元を結城君から隠すようにしてボクに顔を近づけた。

「先輩達はみんな馨くんが怖くてほとんど来てくれないんだよ。」

「怖い…?まあ確かにかなり変わってて近寄りがたいですけど……。」

「普通の人にはまあそのくらいだけど、馨くんのオカルト好きは半端じゃないからね…。ミステリーサークルについて議論した時なんか先輩泣かせちゃったんだから!」

「おい美弥。変な事教え込むなよ。」

「はいは~い。それにしても嬉しいな~!あ、私のことは美弥でいいからね!」

「あ、はい!」

 そのとき扉が開いて三上君が入って来た。

「なんだ、美弥も来てたのか」

「あ…りょ、涼くん…!!う、うん…。」

「(…な、なんか美弥さん突然しおらしくなってません?)」

「(ああ、美弥は涼が好きなんだよ。)」

「あ…ヘェ……。」

 そうだよね……。彼女みたいな綺麗な人に好きな人がいない訳ないか…。

「ね、ねぇ涼くん?この前作ったクッキー食べてくれた?」

「えッッ!?……いや、まだ、というかその…。」

「ああ、この前のクッキーならここにあるよ。食べてあげたら?」

「なっ!?」

「…?(なんで三上君顔が引きつってるんです?)」

「(……一つ食べてみればわかるよ)美弥、ホシガキ君に一つあげるよ。」

 結城君はそういいながら可愛らしくラッピングされたクッキーをボクに差し出した。見た目もこんがりと焼けていてとてもおいしそうだ。ボクはそれを受け取り、一つ口に入れてみると……──。

「ブッ……!?」

 噛んだ瞬間口内に広がったとてつもない味に思わず吐き出しそうになった。砂糖と塩を間違えたとかそんな生易しいものじゃない、とにかく水道で口をすすごうと思った瞬間──

「あ、やっぱり、まずいかな…。」

「(まずいとかそういうレベルじゃないけどね。)」

「(てかわかってるくせに勧めるなよ。)」

「(僕が言わなかったら涼が食べるはめになったろ。ありがたく思えよ。)」

 ……まずい。美弥さんが涙で潤んだ瞳でボクを見つめている………。ここで吐き出すわけにはいかない!

ボグは必死でクッキーを飲み込み、精一杯の笑顔で言った。

「お、おいしいです……!」

 そういうと、美弥さんはとたんにぱっと顔を輝かせ、嬉しそうにその場で飛び跳ねた。

「良かったぁ~!今回のは結構自信作だったんだ♪ありがとう裕太くん!」

「い、いえ…。」

「あれ?カタツムリ君まだ食べたそうな顔してるね?」(棒読み)

「えぇ!?」

「仕方ないな、俺の分もやるよ。一つ残らず食べてくれ。」(棒読み)

「は!?」

「え?え??本当に!?嬉しいな!本当は涼くんの為にと思ったんだけど、気に入ってくれたのなら全部あげるよ!」

「……ありがとうございます………。」


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