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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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第五話 Missing Days(1)


Missing Days(1)

 蝉の声が青空に轟く八月。高校一年生のボク達は夏休み真っ盛りだ。陽炎立つアスファルトの上を往復する毎日から解放され、クーラーの効いた部屋でゲームやマンガを読んで暮らす。ああ、怠惰に過ごせるこんな毎日がずっと続けば良いのに。

「あ、裕太!」

 突然、家から最短の距離にあるコンビニでアイスを買って自動ドアから出てきたところで声をかけられた。

「涼君馨君!一週間ぶり!」

 声をかけてきたのは自転車に乗った涼君と馨君だ。涼君の運転する自転車の荷台に馨君が腰掛けている。私服の二人はなんだか新鮮だ。

「デートみたいだね。」

「冗談やめてよ。」

「馨は自転車乗れないからな。」

「えっ!?そうなの?」

「乗れないんじゃない!乗らないだけだ!!」

 ムキになって否定するが馨君の運動音痴ぶりなら納得だ。相変わらずこの暑さでも長袖で腕の細さを誤魔化している。

「二人ともこれから遊びに行くところ?」

「いや、買い出し。」

「へえ。何の?」

「何のって…合宿のに決まってるだろ。」

 その瞬間嫌な予感が背中に走る。ガッシュク?合宿って、オカルト部のだよね…。

「明日の朝には出発だからね。今日のうちに準備しておかないと。」

「ったくもう少し早くから準備した方が良かったのに、馨が暑いから外出たくないとか文句言うから…。」

「涼が何を用意して良いかわからないって言うから付き合ってやってるんだよ!買い出し担当任せたって言うのに。」

「ちょ、ちょっとまって!ボクその話聞いてないんだけど!」

 ボクの言葉に言い合いをしていた二人が固まる。

「……美弥から夏休み初日にメール来ただろ?」

「全然…。」

「「……。」」

 ボクは急いで帰って準備に取り掛かった。

 翌朝、なんとか準備が整って河盛駅に着くと、ボクを見た美弥さんが本当にすまなそうによって来た。

「裕太くん!本当にごめんね!裕太くんにだけメール送るの忘れちゃって…。」

 何気にひどいことを言ってくる美弥さんだけど、ふわふわした可愛いワンピース姿で目を潤ませた姿を見たら怒る気はなくなった。

「だ、大丈夫だよ美弥さん。それより、そのワンピース…か、可愛いね…。」

「本当!?ありがとう!これ今日おろしたの。涼くんも似合ってるって!」

 そう言って美弥さんは嬉しそうに微笑んだ。やっぱり涼君に見せたかったのか…。

「さて、みなさん集まりましたね。では出発しましょう!」

 いつになく張り切った様子の来須先生が号令をかけ、ボク達は電車に乗った。

「なんで来須先生もいるの?」

「ちょ、酷いですよ結城君!一応私顧問なんですから。保護者としての責任があるんです!」

「へえ!アンタ顧問だったんだ!全っ然部室に来ないからてっきり辞めたんだと思ってましたよ。」

「じょ、冗談キツいです結城君…。」

「まあまあ馨くん!これから楽しい合宿なんだからいじめちゃ可哀想だよ!」

「フン。」

「どういうとこなんだ?美弥。」

「山の麓にある旅館なの!すぐ目の前にいっぱい木々が生えてて、ちょっと山に入れば川があってね、涼しいんだよ!」

 これから向かうところは美弥さんのお母さんの実家で、お母さんの弟、つまり美弥さんの叔父さんが経営している旅館らしい。そこで三泊四日の合宿を行うのだ。美弥さんは毎年夏に行っているらしく、格安で泊めてもらえるということで来須先生も承諾したという。馨君がわくわくした様子で身を乗り出す。

「天狗信仰が盛んなんだろ?楽しみだな!」

「まあ今は結構廃れちゃったけどね。でも天狗グッツはいっぱい売ってるよ!」

 美弥さんはデフォルメされた天狗のマスコットストラップを見せた。ゆるキャラ的でいい加減なデザインだ。

「グッツより本物だよ!着いたらすぐに山で調査だからな!」

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