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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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第三話 Midnight UMA(9)


Midnight UMA(9)



「でも、放って置いたら森野君達も襲われるかもしれないよ。」

「それは愉快だね。僕を馬鹿にした罰だ。」

「性格悪いなお前…。」

「そっか!馨くん、ここで犯人を見つけたら森野くんに借りを作れるよ!襲われた子達は森野くんの手下なわけだし。」

「…。」

「言われっぱなしでいいの?馨くんの凄いところ見せ付けてやろうよ!」

 少しの沈黙のあと、馨君は本を置いてソファーから立ち上がった。

「…そこまで言うならいいよ。」

「やった!さすが馨くんっ!」

 まさかこんな簡単な事で動いてくれるなんて…。馨君も意外と単純なんだな。美弥さんもよく馨くんの扱いを知ってるなあ。そんな事を思ってると、馨君は帰る準備をし出した。

「そうと決まったら東中に行くぞ。さっさと片付けてやる。」

「東中の生徒が犯人なのか?」

「多分ね。でも今日は現れないはずだ。今まで奴が出たのは金曜日だけだから。」

「そういえばそうだね…なんか関係あるの?」

「この手の変質者は大体自分のルールがあるんだよ。そうそう変えないさ。部室閉めるぞ。あと涼、森野の番号知ってるなら連絡しろ。」

 東中に着くと、校門前に森野君と以前一緒にいた友人達がいた。まだ生徒が多く残っているようで、校門から多くの生徒が見える。

「なんか用ですか結城先輩。」

「HRってまだ終わったばかりだよね。てかさ、森野君にしか連絡してないはずなのに随分人数が多いね。一人じゃ来られないの?」

「相変わらずムカつくなアンタ…。用件を言えよ!」

「噛み付くなよ。みんな見てるよ?昨日聞いた話なんだけどさあ、犯人がわかったから教えてあげようと思って。」

「えっマジっすか。」

「すげえ、さすが三上先輩の友達っすね。」

「チッ…。名探偵気取りですか。どうせ下らない話でしょう。」

「ああそうだね。下らない犯人さ。弱そうな不良に目星つけて子供騙しのしょうもない悪戯して喜んでる馬鹿だよ。それも、自分のクラスや虐められた不良に意趣返ししてるつもりなんだろうね。」

「おい馨、声大きいぞ。目立つだろ。」

「あの!じゃあ樹のクラスの奴なんすか!?」

「やっぱ河童なわけなかったんだな。」

「そうだよ。私刑にでもなんでもしなよ。僕は明日から天の川公園で目撃される小人調査の予定があるから失礼。」

 そういうと馨君はくるっと後ろを向いて帰ろうとした。一体なにしに来たんだろう…。これじゃあ森野君の気を逆なでしただけじゃないのかな。

「…ちょっと待ってください。そいつの名前は?」

「…。」

「…はっ。なんだよ。わかってねーんじゃん。名探偵気取ってたワリに大した事ないですね!その程度の推理ならオレでも出来そうだな!わざわざ教えてくれてどうもありがとうございましたー。」

 森野君は勝ち誇ったような顔をしたけど、馨君は何も言わず天の川公園の方へ歩いて行ってしまった。ボク達もよくわからないまま馨君の後を追う。

「馨、何しに来たんだよ。意味わかんねえ。」

「だろうね。別に森野に会うことが目的だったわけじゃないから。」

「えっ?じゃあどうして森野君に連絡したの?」

「東中の番長さんが北高生の集団と話してたら目立つだろ?しかも校門で。それが狙い。」

「わかった!犯人にさっきの会話を聞かせたかったんだね?」

「だからあんなに目立つところで大声で話したのか…。」

「そう。襲われた奴らの家はみんな同じ地域だし、森野のクラスメイトを調べて家の近い奴を見つける方が確実だけど、面倒だし、森野に聞くのはムカつく。」

「確かにねえ。義人くんもいないしね!」

「そもそも、どうして河童じゃなくて人間だって気づいたの?」

「今から見せる。もっとも、明るいうちはよくわからないだろうけど。」

 ボク達は馨君が昨日調査した天の川公園に来ていた。しばらく馨君について行くと、南高の河島君が突き落とされた階段の近くの茂みに着いた。

「…これが光る目の正体だよ。」


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