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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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第三話 Midnight UMA(10)


Midnight UMA(10)


 馨君が指差す地面を見る。一見普通の地面にみえるけど、よく見ると、何か黄色いペンキの様なものがついている枯葉が幾つかと、すぐ近くの木の幹にはこすった様な黄色い後がある。これが光る目の正体って…どういう事だろう?

「…これって何?」

「これが昨日の夜に撮った写真。」

 馨君が携帯の写メを見せる。そこには、黄緑色に光る枯葉と木が写っていた。

「あ、蛍光塗料!」

「ご名答裕太。明るいところじゃ黄色く見えるだけだけど、暗くすると黄緑色に光るんだ。カワハギ君が言ってたよね、見たことのある色だったって。蛍光塗料の光は色んな所に使われているし、独特の色だ。しかも現場の近くに零れているのを見ると、河童の噂と無関係じゃないだろうね。」

「でも、これをここで目の周りに塗ったのかな。」

「額に塗ったんじゃないかな。どう塗ったかはわからないけど、前髪で隠れたりすれば人間は単純だから、暗い中で光る部分を目だと勘違いするよ。」

「でも、なんでこんなもの顔に塗るんだ?」

「儀式だと思うよ。金曜日しか人を襲わない事と同じさ。何か自分の中でルールがあるんだ。不良しか狙わないのは制裁を加えているつもりか、何かコンプレックスがあるのかもね。まあ僕はプロファイラーじゃないからわからないけど。」

「恨みがあるからじゃないの?」

「個人の恨みとは違うと思うよ。襲われた奴らは特に仲が良かったわけじゃない。共通点は家が近い事、華奢な体格って事くらいだ。」

「なら、なんで森野のクラスメイトだってわかったんだ?」

「第一被害者から第三被害者まですべて森野のクラスメイトだ。最初は誰でも慎重になるだろ?犯人は多分手近にいる人間からターゲットを絞ったんだ。同じクラスの人間三人が襲われたってことはクラスメイトの可能性が高い。少なくとも、東中の生徒だろう。そして三回も上手く行って調子に乗った犯人は高校生にも手を出すことにした。それが先週だね。そして高校生の方にも河童の噂として流れたってわけだ。」

 確かに、筋が通ってる。でも、そうだとしたらまたおかしな考えの異常者なんじゃないだろうか。いくら中学生とはいえ、そんな人にまた関わらなきゃいけないというのは正直怖い。馨君にまかせて、本当に大丈夫なんだろうか…。

「でも、どうして校門で森野と話す必要があったんだ?」

「森野のクラスって事は、当然面識があるはずだ。不良ばかり襲うあたり、あいつも候補に近い。強くて手が出せないにしろ、舎弟のカワシモ君達を襲った分当然動向に気を配っているだろう。そこであんな目立つ所で自分の話をされていれば絶対に注意を向ける。それで挑発したんだ。」

「川上な。なんで挑発する必要があるんだよ。」

「明日になればわかるはずだ。さて、帰りながら明日の予定を説明するぞ。」

「えっ!本当に小人調査するの?」

「小人ね…。ある意味そうなるかも。」

「?」

「とりあえず、明日、涼と美弥、裕太は一旦──」

 金曜日の夜十一時手前、道路の灯りがわずかに届く、暗い天の川公園を歩く人影が一つ。発光の弱い、今にも電池が切れてしまいそうな懐中電灯片手に一人しんとした公園の奥の方に進んでいく。時折茂みを照らしたり、立ち止まったりして、本当に小人探しをしているように見える。しかし、ついに懐中電灯の灯りが薄れ、消えてしまった。カチカチとスイッチをいじるが付かない。ふと、後ろに視線を感じて振り返ると、緑色の光の尾を引きながら小柄な人影が棒を振りかざして突進してきた。

「い、いやあああ!」

「?!」

 小柄な人物は一瞬何が起こったのかわかっていない様子だ。彼は棒を持って突っ込んだは良いが、相手にタックルを食らって尻餅をついたのだ。彼の顔に懐中電灯の灯りが当てられる。彼はさぞ驚いた事だろう。そこには自分が狙ってた人物と同じ格好をした女の子が立っていたんだから。


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