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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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第二話 Beautiful Vampire(3)


Beautiful Vampire(3)


「おはよー!涼くん、馨くん、裕太くん!それから、ヨハネスくん!」

「おはよ、美弥。朝からうちのクラスに来るなんて珍しいね」

「あ、えっと…君は?」

 月曜日、ヨハネス君はちょっと驚いた様な顔で美弥さんを見つめている。無理もない、美弥さんは2組で、ヨハネス君とは初対面だからだ。

「あ、私2組の木下美弥!初めまして!えーっと私馨くん達の友達なの。三人がヨハネスくんの話してたから、仲良くなりたいなーって思って…。」

「そうなんだ!よろしくね、木下さん。」

 美弥さんは上手い事オカルト研究部の事をぼかして説明をした。ヨハネス君は爽やかな微笑みを美弥さんに向けた。美弥さんはほんのり赤くなったが、すぐ気を取り直して後ろ手で持っていたクッキーを差し出した。

「あの、それでね、このお菓子、手作りなんだけどもしよかったらどう、かな…?あ!決して変な意味じゃないよ!?みんなで、涼くん含めてみんなで食べてね!」

「え!わざわざありがとう!みんなで食べるね?」

 ヨハネス君の喜んだ顔を見ると、美弥さんは蒸気でもあげそうな勢いで真っ赤になり、フラフラと教室を出て行った。やっぱり女の子は格好良い男の子がいいんだなあ。ヨハネス君と涼君が少し羨ましい。

「可愛い人だね、木下さんて。それじゃあ、授業始まっちゃう前にみんなで食べようよ。」

「……え、うん。…そうだね。」

「やっぱり…食べなきゃいけない、よな……。」

 馨君と涼君は先程の美弥さんとは正反対に真っ青になっている。そうだった。これは“あの"美弥さんの手作りお菓子だった。おそらくこの中に対吸血鬼用の何かが含まれているんだろうが、たとえ含まれてなくてもみんな酷い目にあうんだろう事は容易に想像が着いた。ボク達の表情を見てヨハネス君はきょとんとしている。

「どうかしたの?」

「あ、いやなんでもない!…(馨、本当に食べるのか、ここで。)」

「(仕方ないだろ。まさか全員に食べるよう促すとは思ってなかっが、ここで食べないと不自然だ。)ちょうど人数分一枚ずつあるね。時間になる前に早く食べよう。」

「う、うん…。」

 ボク達は可愛らしい袋から取り出したきつね色のクッキーをじっと見つめ、お互いの顔を確認し、決心を固めるとそれを一気に口へ入れた。

「どうだったかな?にんにくと聖別されたパンていうの日曜日に教会からもらって来て入れたんだけど…。」

「……美弥は食べたの?」

「あ、いや、生地の時点でちょっと凄い臭いだから私は遠慮しちゃったんだよねー…ゴメンね。えへへ。」

「えへへじゃねーよ!どんだけニンニク入れたんだ!味はおろか腹は壊すしヨハネスどころじゃなかったぞ!」

「ヨハネス君も同じ反応だったけどね…。」

「美弥はしばらく菓子作り禁止。部長命令。」

「えー!」

 むくれる美弥さんを尻目に馨君はまだお腹が痛いのか青白い顔で部室のソファーに腰掛けたが、紙とペンを取り出し、次の作戦について書き出した。

「…次こそは成功させるぞ。」

「まだやるのかよ…。体がもたねえ。」

「体を張るのは今回で終わりだ。正直この中じゃ僕が一番もたないよ。それで一つ考えたんだ。」

「え、馨君が?」

「何不安そうな顔してるんだよ裕太。次は簡単だ。みんなで涼の家に行くだけでいい。」

「は?!なんでだよ。」

「まだ説明していない特徴があったね。吸血鬼は招かれた家にしか入れないんだ。だから、僕達で涼の家に行こうと話しているところ、“たまたま"ヨハネス君を見つけ、そのまま同行する。で、先に家に帰っている涼が家に入れる。それでもしヨハネス君が家に入れなかったら彼は吸血鬼だって証明できる。」

「今日は忙しいって言われたらどうするの?」

「事前にヨハネス君の予定を聞き出しておけばいい。涼が比較的仲がいいからそれは任せたよ。」

「なんで俺の家なんだよ。」

「僕と裕太の家は親がいるし、美弥は一応女の子なんだから男友達をいきなり沢山呼ぶのは悪いだろ。」

「そうだね!涼くんをママに紹介するのはまだ早いよ!」

「うんまあそこまで聞いてないけど。じゃ、涼よろしくー。」

 馨君は涼君がやることを書いた紙を強引に押し付け、さっさと帰り支度をしている。その後ろ姿を見ながら、涼君は不満そうな顔をしている。

「…ったく。」

「まあ、普通に考えて家に入れるだろうし、そしたら仲良くしたらいいじゃない。今回みたいにはならないよ!」

「うん、そうだよ!私もヨハネスくんに謝りたいし…。」

「…まあ、そうだな。これが上手くいけば馨も諦めるか。」

 どうやら涼君は今回、いつも以上に乗り気じゃないみたいだ。馨君も普段に増してに横暴な気がする。また喧嘩にならなければいいけど…。


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