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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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第二話 Beautiful Vampire(2)


Beautiful Vampire(2)




「えー、転入生を紹介します。みんな静かにしてください。」

「ヨハネス・アルフォンヌです。これからよろしく御願いします。」

 ルーマニアから来たという彼は、とても流暢な日本語を話した。とても日本に来たのが今回が初めてとは思えないほどだ。見た目も写真にもまさる美形で、クラスの女子達がひそひそと話し始めた。

「日本語があんなに達者だなんて、ますます怪しいね。」

 不意に耳元でささやかれて、驚いて振り向くと、不適に笑った馨くんの顔があった。あれから席替えがあって、馨くんはボクの後ろの席になったんだ。ちなみに涼くんは彼の左隣。

「そんな…。吸血鬼が語学力に長けてるなんて聞いたことないよ?」

「別に?僕は、二三週間で日本語をあんなに喋れるようになるなんて、“並の”人間じゃ出来ないねって言いたいだけだけど?」

「おい、馨…──」

「通信教育でずっと日本語のレッスンは受けてたんだよ。」

 びっくりしてボク達はその声の先を見た。そこにはニコニコと笑ったアルフォンヌ君の姿があった。どうやら担任の熊川が彼に座らせた席は涼くんの左隣だったようだ。

「君たち、おしゃべりは後にしなさい。」

「あ、すみません。先生。」

「…面白い話をしてるんだね。君たち名前なんて言うの?」

「あ、ボクは柿本裕太…。」

「…三上涼。」

「僕は結城馨だよ。アルフォンヌ君、よろしくね!」

「よ、よろしく…。あ、ぼくのことはヨハネスでいいよ。ぼくまだこの学校のこととか良くわからないし、いろいろ教えてね。後、涼君。教科書届くまで一緒に見せてもらえる?」

「あ、ああ。いいよ。」

 馨君が御得意の猫かぶり(前にうちの母さんにもやった)で対応したのでちょっと引いたようだが、ヨハネス君はもとのように微笑み、涼君と話している。…今見た限りでは、とても誠実で明るい、いい人に見える。ましてや、とても吸血鬼なんかには思えない。

「ねぇねぇ馨くん!例のヨハネスくんどうだった??すっごく格好いいって評判だよ!」

 放課後、美弥さんが興奮した様子で馨くんに詰め寄って来た。

「ああ。いかにも吸血鬼らしく、銀髪の美少年だったよ。」

「いいないいな~!私もナマで見たかった~。」

「…美弥は涼一筋なんじゃなかったの?」

「(はっ)え、いや、だって、格好いい人は誰でも見たくなるじゃない!べ、別に浮気とかそう言うのじゃないからね!」

「そこまで言ってないよ。」

「浮気?何の話だ?」

「りょりょ涼くん!?……ご、ゴメンナサイーーー!」

「うっ!?」

 遅れてやって来た涼くんを見ると、美弥さんは顔をみるみる真っ赤にして涼くんを突き飛ばして走って行った。美弥さんはああ見えて怪力の持ち主なのだ。

「相変わらず激しいね…。涼君大丈夫?」

「み、鳩尾思い切り殴られた…。なんなんだ美弥は。」

「さあね。それより、ヨハネス君だよヨハネス君!」

「またその話なの?」

「またってなんだよ裕太。これは大事な依頼だよ。話して何が悪いんだ。」

「は、はあ…。」

「彼は見た目だけじゃなく、学習能力の高さも異常だ。通信教育と言っていたが本当はどうかわからない。とりあえずしばらくは怪しげな動きをしないか観察しよう。」

「異常って…。気にしすぎじゃないかなあ。」

「まったくだ。普通にいい奴じゃないか。」

「そこがまた怪しいって言ってるんだ。だいたい顔もいい、頭もいい、性格もいいなんて人間いるわけないね!絶対何か裏があるに決まってる。」

「お前…。それってただの嫉妬じゃ──」

「涼、何か言ったか。」

「い、いいえ。」

 涼君の方を振り返った馨君の目はなにをするかわからない恐ろしい光を帯びていた。さすがの涼君もぞっとしたようだ。以前田口をひと睨みで縮こませた涼君さえ恐怖させるとは、やはり馨君はただものじゃない。

「フン。まあいい。部活始めるぞ。美弥、もう入ってきたらいいだろ」

「う、うん。」

 美弥さんがドアの向こうからおずおずと顔を表した。どうやらそこに隠れていたようだ。美弥さんが席に着くとボク達は話を続けた。

「それで、お前は具体的になにをしたら満足するんだ?」

「言い方に気をつけないとどうなると思ってる?」

 馨君が不気味に微笑み、机の下で涼君の脛を蹴るのが見えた。ドSだ。

「いっった!何すんだ!」

「もー二人とも!馨くん、それでどうやってヨハネスくんが吸血鬼か調べるの?」

「そうだな。吸血鬼には数多くの弱点や特徴がある。それを一つ一つ検証していこうと思う。」

「弱点や特徴って?」

「まず、重要なのは彼らは死者の蘇りであり、生命体ではない。そしてその体を動かし続けるために生き血をすすらなくてはならないと言う事だ。バビロニアのリリットと言う赤ん坊の生き血をすする魔物が起源だとか、まあ色々な吸血鬼の伝説は存在するが、現在の吸血鬼はユダヤ教、キリスト教に由来している」

「てことは、ゾンビって言うよりは悪魔に近いのかな?」

「そのとおりさ裕太。まあもとは人間だけどね。旧約聖書で血を飲む事は禁じられている。その事から、吸血鬼は神に反逆する者がなると考えられていたんだよ。洗礼を受けなかった者やキリスト教を破門された者なんかがね。だから聖なるものには弱いと考えられている。」

「そういえば私、映画で見た事ある!吸血鬼は十字架とニンニクが苦手なんだよね。それから鏡に映らないとか、日光に当たると灰になっちゃうんだっけ。」

「あ、そういえばヨハネスは普通に昼間に外に出てるじゃねーか。」

「確かに美弥が言った特徴は有名な吸血鬼の特徴だけど、メディアによって植え付けられた特徴もいくつかあるな。日光だけど、言い伝えでは吸血鬼は確かに夜行性で、日光のもとでは本来の力は出せないが、灰になるとは言われていない。吸血鬼が日光で燃え尽きるという演出を最初に行ったのはF・W・ムルナウ監督映画『ノスフェラトウ』からで、以後の映画ではこの演出が頻繁に使われて一般化したんだよ。同じように鏡に映らないというのも一部の地域でしか言われていなかった特徴だ。これも映画の影響らしい。」

「へえ~。映画の演出って大きいんだね。」

「そうだね。映画ではコウモリに変身するのが当たり前だけど、本当は蜘蛛や蝶、霧になったりもできると言われている。それにあまり知られていないけど、十字架だけでなく聖水や聖別されたパンなんかを恐れると言われているよ。」

「聖別されたパンってなんだ?」

「聖餐式、といっても涼にはわかんないよな。ようは司祭がお祈りして、神のために用いる聖なるものとして、他のものと区別されたパンてこと。聖別されたパンはキリストの肉と同じなんだ。だから恐れるのさ」

「でも、どうしてニンニクを恐れるの?別に聖なるものじゃなくない?」

「いや、民間ではニンニクも魔除けになるとされていたんだ。匂いが強烈であった事や、万病に聞くとされていたせいじゃないかと言われてるね。特にルーマニアでは各部屋にニンニクの鱗片を吊るして吸血鬼除けにされたらしいよ。」

「じゃあそれを一つ一つ検証していけばいいの?」

「そうだな。とりあえずそうしようと思う。」

「おい馨、いくらなんでも人を実験材料みたいにするのは悪いだろ。相手は日本に来たばかりなんだぞ?」

「なんだよ涼。僕に逆らうのか?」

「いくら何でも横暴だっていってんだよ。てかなんだその上から目線は!」

 馨くんと涼くんの言い争いが始まってしまった。馨くんは言い出したら聞かない性格だし、涼君は結構常識人なのでこういう事はすぐ言い合いになってしまう。なんとか二人をなだめなきゃ、とおろおろしていると、美弥さんが制してくれた。

「まあまあ涼くん馨くん!ちょっと面白そうじゃない。これを機にヨハネスくんとも仲良くなれるかもしれないしね?それに、私いい事思いついたの!」

「…なんか案があるの?美弥。」

「まだ秘密!来週のお楽しみだよ!」

 そういって美弥さんはボクにこっそりウインクした。ボクは改めて美弥さんに惚れ直しつつ、、何とも知れない不安が頭をよぎったのであった。

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