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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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Albtraum番外編1(6)


番外編1(6)



 涼は橋の下の河原に連れて来られていた。ここは登下校時刻以外はほとんど人目につかない場所である。不良達は橋の真下にある柱に涼を追い詰め、さらに人に見えないようにしてから、涼に尋ねた。

「なあ三上。昨日なんで来なかった?俺達の伝言聞いたんだろ?」

「……。」

「…黙ってちゃわかんねえだろ。何とかいえよ。」

「俺たちお前のせいで喧嘩負けるとこだったんだぜ。ま、靏見さんのおかげでなんとかなったけどさあ。」

「靏見さんが優しくしてる間に答えた方が身のためだぜ三上~。綺麗な顔が見る影なくなっちゃうよ~。」

「流石に『大黒天の三上』もボクシングやってた靏見さん相手は無理だろ?」

「…俺、もうあんたらとつるむの辞めます。いきなりですいません。」

「…は?」

「おい、マジで調子のんなよ。はいそうですかっていうとでも思ってんのか?」

「…俺は、自分を認めてくれて、必要としてくれる存在が欲しかった。でも、あんたらとつるんでても周りに迷惑かけるだけなんだよ…。だからすみません。もう関わらないで下さい。」

「意味わかんねえ事言ってんじゃねーよ!!そんな簡単な話じゃない事くらいわかんだろ!」

「…良いよ。抜けさせてやるよ。」

「ちょ、靏見さん!?」

「え、いいんすかぁ?裏切り行為っすよ!」

「あーいいよ。ただし、それなりの誠意見せてくれたらな?」

「……。…何すればいいんすか。」

「俺たちに好きなだけ殴らせろよ。昨日のすっぽかしの罰含めてさ。」

「おーそれいいっすね!丁度ストレス溜まってたし。」

「あの三上殴れるとかいいな!ちゃーんと俺たちが良いって言うまで耐えられたら許してやるよ。」

「…わかりました。」

「いいねーカッコつけちゃってさあ!やっちゃいましょうよ靏見さん!おい三上!避けるなよ!」

「お前黙れ。…マジでいいんだな?手加減しねーよ。」

「はい。」

 靏見は上着を脱ぐと強力な右ストレートを涼の顔面に叩き込んだ。が、涼はとっさに腕で顔をガードした。しかし、ボクシング経験者の高校生の渾身の一撃に体は吹っ飛んだ。

「くっ…!」

「いきなり顔って…。」

「マジすげえ!流石靏見さん!」

「おいおいガードしてんじゃねーよ三上!オラァ!」

 続いて別の不良が転がった涼の背中を蹴る。それを皮切りに皆思い思いの部位を蹴ったり踏みつけたりしだした。涼は反射的に顔と腹をかばう姿勢をとって耐え続けた。

「ははっ!こんな縮こまりやがって、大黒天の三上が聞いて呆れるなあ!」

「でも本当に抵抗して来ねえとつまんねえな。」

「なーいい加減降伏したらどうだよ。今ならまだもう一回仲間にしてやるぜ?」

 靏見がいうと涼は顔をあげ、靏見の方を睨み不敵に笑ってみせた。

「ぜってー嫌だ。」

「っ!」

 とっさにカッとなった靏見は涼の顔を蹴りあげた。しかし涼は持ち前の反射神経で顔をガードし直撃を防ぐ。それに更にムカついた靏見は仲間に命令した。

「おい、コイツの体起こせ。羽交い締めにしろ。」

「了解っすー。」

 二人がかりで羽交い締めにして立たせると靏見は満足した。涼に近寄り、顎を掴んで無理やり目線を合わさせる。

「思ったより満身創痍ってわけじゃねえなあ三上。お顔も綺麗なままじゃん。上手く大事な所守れるのは流石だよ。ま、そりゃあまだ降伏する気にはならねえよな!!」

 そういいながら靏見は涼の鳩尾を殴った。流石に腕を両方塞がれているので完全には防げなかったが、腹筋に力を込め、重心を上手く移動するることで多少ダメージを減らした。しかし、先程よりも大分ダメージを受けてしまった。

「うぐっ…!」

「コイツ…靏見さんのパンチ受けて立ってられんのかよ…。」

「化け物だな…。」

「ふん。でも今のは流石に堪えたみたいだなあ。いつまで耐えられるか楽しみだよっ!」

 靏見は連続して涼の腹を殴った。涼は流石に耐えられず、吐いてしまった。

「がはっ…!ゴホ、ゲホ…はぁ、はぁ……。」

「うわ、コイツ吐きやがった。汚ねえー。」

「ここまで意識保ってられるとはなー。」

「ちょ、おい血ぃ混じってんぞ。やばくね?」

「はあ、はあ…いい加減降参しろよ。死にてーのか。」

「三上!『許してください。お願いします。』って言えよ!」

「…もう俺に関わらないで下さい。お願いします。」

「っ…!ちげえっつってんだろッッ!!おちょくってんのか!!」

「う、靏見さん!もうこれ以上はやばいっすよ!」

 靏見がもう一度、今度は力一杯涼の腹を殴ろうとした時、後ろで鈍い音がした。



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