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Panta rhei

当ブログは管理人、三枝りりおのオリジナル作品を掲載するブログです。

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Albtraum番外編1(7)

「…なんだ?」

「それ以上は本当にやめた方が良いですよ南奎宿高校三年靏見翔太先輩。殺人犯になりたいんですか?」

「…ゆう、き?」

 そこには、何処からか拾ってきた鉄パイプを手にした結城の姿があった。どうも取り巻いていた不良の一人を殴ったようだ。殴られた不良は頭をさすっている。

「いってー。何しやがんだてめえ!」

「…また三上の友達か。お前は友達に恵まれてるねぇ。でも、そんなもやしみたいな体で俺たちに勝てると思ってんの?」

「…やめろ結城……。お前の腕力じゃ…武器があっても、怪我するだけ、だ…。早く帰れ……。」

「三上くんこそ喋るなよ。内臓傷付いてんだから。無理すると本当に死ぬよ?」

「いいねえ。親友のピンチに駆けつけるなんて、感動の友情物語だよ。ならお前が代わりに殴られる?」

「やめろ…!そい、つは…関係ないんだ!」

「…上等ですよ。どーぞ。」

「結城!」

「おー威勢がいいねえ!じゃあハンデとしてその鉄パイプで反撃してもいい事にしてやるよ。おい、三上はそこに転がしとけ。」

「は、はい!」

 不良達は涼を人目に一番付かない所に放ると、結城に近づいてきた。普段冷静な結城も緊張しているのか、鉄パイプを握る手が震えている。

「おいおいボク~手が震えてるぜ?喧嘩は初めてかなあ。」

「嘆くなら三上なんて化け物とお友達になっちゃった自分を嘆けよ~。」

「結城…。逃げ、ろ…!俺に構わないでくれ…内申、下げたくないんだろ?」

「…三上くん、馬鹿なの?今他人の事心配してる場合じゃないでしょ。それに、せっかくちゃんと自分と向き合った君をこんなとこで亡くしたくないし。」

「…はっ、なんだよそれ。そいつら、お前に…敵う相手じゃねーんだって……。」

「そう言って行動しないんじゃ、何も守れないんだよ!集中してんだから話しかけんな死に損ない!」

「っ!」

「ごちゃごちゃおしゃべりしてんじゃねーよ。オラ、行くぞ!」

 不良の一人が結城に襲い掛かった。結城は鉄パイプを盾にして辛うじて攻撃を防ぐが、体制を崩して転ぶ。

「うっ!」

「弱え~な!お前本当に三上の友達かよ!」

「俺たち相手にするくらいだからそれなりの強さだと思ったけど、やっぱただのガキじゃん。拍子抜けだな。」

「ほらボクちゃん立ちなよ~。かかっておいで~。」

「……そうやって油断してると負けますよ?」

「は?」

 結城は地面の砂を一番近くにいた不良の顔にぶつけ、目を潰すと、素早く立ち上がり遠心力で鉄パイプを相手のわき腹めがけて思い切り振った。とっさの事に不良はなす術なくその場にうずくまる。

「ぐああ!」

「お、おい大丈夫か?!」

「心配ないですよ。いくら遠心力付けてるって言っても僕の力なんで骨は折れてないと思います。柔らかいとこ殴ったし。でも、ナメてると痛い目みますよ?」

「てめえ…ちょっとうまく行ったからって調子乗ってんじゃねーぞ!!」

 カッとなった不良の一人が結城を蹴り上げた。結城は鉄パイプで防ごうとしたが、威力で鉄パイプは飛ばされてしまう。そこにすかさず次の蹴りを結城に入れた。鉄パイプを飛ばされた事で次の行動が取れなかった結城はもろに攻撃を受け、細い体が吹っ飛ぶ。

 ガン!

 鈍い音がした。

「結城!!」

「っ…。………。」

「…え、ちょ、今変な音しなかったか?」

「お、俺そんな本気で蹴ってねーよ!な、なあ…大丈夫か?」

「大丈夫かってお前がやったんだろ。…おい、立てよ!」

「う、ああ!コイツ血が、血がこんな出てんぞ!!」

 不良達がコンクリートの柱に寄りかかる結城の体を揺さぶるが全く反応がない。口からは血が流れている。

「結城!結城!!返事しろよ!」

「これ、ヤバイだろ…靏見さん!」

「……っぁ…」

「靏見さん!!」

「…み、三上!俺たちは今までもこれからもなんの関わりもない!いいな?」

「は、はあ?!ふっざけんな!」

「うるせえ!いいか、お前らが勝手に喧嘩したんだ!誰かに俺たちの名前言ってみろ、ただじゃすまねえからな!!」

「あっ靏見さん、待ってくださいよー!」

「三上!絶対言うなよ!!」

 靏見は声を裏返らせながら怒鳴ると、逃げるように河原から出て行き、不良どももそれを追いかけて行った。涼は追いかけて捕まえる力も残っておらず、這いずりながら結城に近寄った。



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